今回の課題図書はダン・アリエリー著の「ずる〜嘘とごまかしの行動経済学」でした。
ずる――噓とごまかしの行動経済学 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)
なかなか気になるタイトル。
人はなぜご、どういう状況でごまかそうという行動に出るのか。
著者の研究活動を読みやすくまとめた作品です。
シェアハウスのハウスルールをうまく活用したいと思っている私にとって、これはかなり実務的な書でした。
私の仕事においては「なぜハウスメイトはハウスルールを守れないのか」という命題に置き換えられるからです。
ハウスルールを設定したからといって、守られるとは限りません。
人数、国籍構成などで守られ方にもばらつきがあります。
しかも一度説明したとしても、理解されているかどうかは定かでなく、むしろ理解されていないことの方が多いと思っていたほうが現実と向き合えるかもしれません(^^)
どうやったらハウスルールに沿った行動をとってもらえるか、今私にとって課題の一つです。
その考え方のヒントがこの本に書かれています。
つじつまをあわせようとする傾向
疲れているとごまかししやすくなる
にせものとわかっていて身につけるとごまかそうという傾向が強くなる
ごまかしは感染する
1人よりもみんなのほうがずるしやすい
どれも興味深い話なのですが、中でも「倫理観を意識するとごまかさない傾向にある」が個人的に印象深かった項目の一つでした。
倫理観に訴える、というやり方は自分が期待する方向でもあります。
今シェアハウスでもこの点をヒントにして対応しています。
それから、創造性が高いとごまかす可能性が高い、という点。
〜創造性は、厄介な問題を解決する斬新な方法を生み出す助けになるのと同じように、規則をかいくぐる独創的な方法を生み出し、情報を自分勝手な方法で解釈し直す助けにもなる。〜
(本書 第七章より抜粋)
新しい知見でした。
確かに、「ある規範を超えることを”ずる”としたら、既成の概念を超えることは”創造”でもあり」似たような性質をもっている気がします。
〜わたしたちは創造性のおかげでもっと「よい」物語をーもっと不正なことをしても、自分をすばらしく正直な人物だと思い続けるのに役立つような物語をー紡ぎ出すことができるのだ〜
(本書 第七章より抜粋)
なんとも耳の痛い話です。
自分を正当化するための物語を作って不正を行うことと、夢を語ってイノベーターとして新しい世界を拡げることとと、やっていることは酷似しており、その評価は紙一重で雲泥の差となるわけです。
読書会でもこの点が議論されました。
自己利益が目的になっている場合と、社会・他者・環境利益が目的になっている場合で不正かヒーローかに別れるのでは、という意見が興味深かったです。
人からお金を盗むと「泥棒」と不正のレッテルを貼られますが、戦争で国の領土を奪ったときはその限りではありません。
ごまかす、とかずるをする、というのは誰にでも起こりうることであり、しかも自分の中で正当化して自己防衛を図るので自覚しにくいかもしれません。
人という感情をもった生き物は、なかなか難しい生き物であることを示唆する本書です。
ずる――噓とごまかしの行動経済学 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)