今回の課題図書は光本勇介氏著作の「実験思考」でした。
本書のタイトル通り、この本の出版も実験になっています。
Kindleは0円でダウンロードでき、この本を読んで価値ある額があれば指定のURLから支払ってもらう、というもの。
もちろんタダ読みされるリスクは大いにあるのですが、これも実験、ということのようです。
さきに申しますと、この実験で集まったお金は1億円。
なんとまぁ。。。
もちろん、堀江氏が2,000万円、弁護士の1,000万円といった大口の支払い者がいたものの、1万円支払った人の数はかなり多く、この本の反響の大きさを物語っています(^^)
さてこの本ですが、「まずはやってみよう」という路線かな。
やみくもにやるのではなく、興味をもったらまず仮説をもって行動し、その仮説検証を次の行動に活かす、そんな行動です。
30年前に比べると世の中の変化は早くなり、サービスもハードウエアからソフトウエアが中心となってきた現代。
ハードウエアをリリースするときは、一旦出したあとでトラブルを起こすとその対応に大きな費用をかけることになるため、事前考察、事前検証がとても重要視されていました。
現代でも車や電池は欠陥があればリコールとなって大きな損失を生みます。
なぜならハードウエアは簡単に修正がきかないから。
しかし今はソフトウエアの時代。
なにはともあれ市場にリリースして反応をみて、問題があれば修正をしプログラムを変えればいい。
“早く”リリースするというスピードが求められています。
「実験検証」とはまさにそんな考え方をビジネスに活かした活動です。
いろいろな実例があって、この著者が類まれな非凡なる才をもっていることを印象付けられます。
読書会で「ではいったいいくらこの本に払いますか」という問いかけをしたところ、なかなか厳しい評価が多かったです。
理由は
- 薄っぺらい
- 当たり前の話しか感じない
- 違和感を感じる
といった比較的ネガティブな印象によるものでした。
私は、この著者の事業センスはすばらしく、センスと行動力を両方をもった人だなぁという印象をもちつつも、あまり共感するところがなかったんですね。
なぜだろう。
一つはこの著者が経験している世界を自分が知らないからもしれません。
動きの早い事業環境で会社設立から売却、再びMBOといった会社を動かすような経験を私はしていません。
なるほど、そういう面はあるかもしれませんが、他にもありそうです。
失敗、欠点、そういった“無駄な”要素を感じないからかも、それが私の仮説です。
人はいいことばかりでなく、失敗したことや欠点を持っているもの。
しくじり先生という番組が流行ったり、原体験でのつらい過去の話をきいたり、どん底から這い上がってくるストーリーだったりするところに、多くの人が共感点をもつと思います。
一見、今の姿にとって“無駄”だったと思われる体験が実はその人の血肉であり、そこに何かしら確固たる信頼のようなものを見出すような気がするのです。
また人は相手に欠点があることで、自分がちょっと優位に立てる(マウンティング)安心感を持つ傾向にあると思っています。
完全無欠な俳優より、おデブキャラやおバカキャラのタレントが売れっ子だったりするのはそういった心理が働いているのではないかと思います。
ところがこの著者にはその“無駄”を感じないんですね。
才があるせいか、いとも簡単に事業をこなしているような印象を本書からうけてしまうのです。
物をなるべく持たないミニマリストや、会社の付き合いは避けるといった“無駄なことをしている暇はない”という風潮は、今の時代共感されるようです。
なんかそんなスマートさを感じるんですよね(^^)
人の魅力って、今のいい姿だけでなく、その裏に隠れている苦労や失敗が見え隠れするところにあるんじゃないかなぁ。
いい状態と悪い状態の差、これが“深み”とか言われる要素を作っていると思います。
だから“悪い状態”を知らない人は“深みがない”という印象を与えてしまうのかも。
それから著者が興味があるのは「ビジネス」であってビジネス対象は正直なんでもいい、というところは、ある意味淡白な印象を与えますね(^^)
とはいえ、この光本氏は挑戦し続けている起業家であることは間違いありません。
そしてその才もすばらしいものをもっていて、事業家としての魅力たっぷりな人でしょう。
本書の中で彼は「当たり前と思われていることを疑う」ことで事業のきっかけを掴んできたと述べています。
環境やパワーに流されることなく現実を見つめて生きていく姿は、我々も学ぶべきところはあります。
ちょっとこれから注目してみたい一人です。