社会派小説家の真山仁さんが2017年に発行した「オペレーションZ」を読了。
真山さんの小説はぐいぐい引き寄せられる魔力があり、読み始めたら少しの時間ができると本に目を通すようになり、あっという間に読んでしまいました。
これは国の借金が1,000兆円を超えてデフォルト(国家破綻)に陥る危機を、総理が歳出に大なたをふるおうとするが、官僚、世論、メディア、内部であるはずの政治家などの抵抗、裏切りにあいながらも推し進めていくドラマです。
結論は・・・ネタバレになるので(^^)
小説ですから、事実と異なるという前提ではありますが、真山さんの作品はその時その時の社会問題を取り上げて小説という形で問題提起をされていらっしゃいますので、実はかなり現実と重なる部分があります。
この舞台の前提となっている国家財政ですが、本書では税収が50兆円に対して歳出が100兆円、すなわち1年間で50兆円の債務を産んでいるという指摘があります。
実際はどうでしょう。
2018年度の予算案を見ると
税収は59兆円、歳出は98兆円
とほぼ同じレベルにあります。
こちらのURLにわかりやすく解説があります。
それから「国の借金が1000兆円になっても財政破綻しない」と暗に1000兆円くらいあるような記載があります。
実際はどうでしょうか。
バランスシートでみると資産が約986兆円に対して、負債が1,470兆円なので差し引き約484兆円が債務超過となっています。
負債のうち約825兆円が公債、すなわち国債です。
この825兆円のうち約459兆円は日銀が引き受けているので、差し引き366兆円が実質借金となります。
バランスシートでは他に純粋な借入金が35兆円あるので、ざっくり400兆円ちょっとが借金といえそうです。
とはいえ、負債が1,470兆円でそのうち459兆円日銀引受の国債を差し引くと実質1,000兆円くらいが負債となっていますので、我々の庶民感覚でいうと1,000兆円借金、といっても大きくはずれていないかもしれませんね。
日本のバランスシートはこちら。
https://www.mof.go.jp/budget/report/public_finance_fact_sheet/fy2016/national/fy2016renketsu.pdf
日本政府のバランスシートについてわかりやすい解説をしてくれているのはこちら。
なかなか現実味があります(^^)
デフォルト、すなわち国家的な債務不履行です。
会社ではいえば倒産、個人で言えば破産と同じですね。
この本にもでていますがアルゼンチンが2001年にデフォルトをおこしましたし、ギリシャの件も有名です。
この本でもそれと思わせるような自治体や関連していそうな登場人物が多くでてきます。
さてさて、中身についてはネタバレのためここでは書くことはできませんが、財務改善のための施策という点で、いろいろと示唆を受けることがありました。
この本に出てくる反対勢力の論法は
歳出を削減する
→ 予算がないので活動ができない
→ サービスの質が落ちる
→ 弱者層が生活できなくなる
という展開です。
ポイントは最初の「予算がないと活動できない」というところです。
お金をかけずにやれることを知恵を絞る。
そのキーが人同士のかかわり合いなんです。
シェアハウスを運営していて実感するのですが、入居者同士の信用度が高いとルールを細かく設定しなくても良かったり、トラブルが減って対応する必要もなかったり、すなわちメンテナンスコストが低くなります。
入居者同士でサポートし合ったりする機会が多くなります。
人同士がかかわり合い、お互いの信用度が上がることでお金をかけずにサービスが成立することが可能になるのです。
シェアハウスでもお金かけて箱物を作って、後は放置、それで儲かると思っている人が少なくないことは、昨今のかぼちゃの馬車の案件で証明済です。
こういう人にとってみればお金がたくさん必要です。
そして価格しか魅力のない物件となって、価格競争というレッドオーションの世界に引きずり込まれ、収益は悪化する方向に導かれます。
一方で自分の手でボロ屋をリノベーションをし、その後入居者へのサービスを創意工夫して提供している運営者もいます。
お金が少なくても実現できるということですね。
アイデアだけではもちろん形にはなりませんが、着眼点をみせてくれていると思います。
大きなことは言えないけど、身の回りのことでできることから。
1億人が積み重ねれば小さなことも大きな成果になるんじゃないかな、と(^^)