先日NHKスペシャルでこのような番組が放映されました。
二・二六事件は昭和11年に起きた一部の陸軍将校たちによるクーデター未遂事件です。
クーデター自体は失敗に終わりましたが当時の閣僚を始め、警察関係者合わせて9人が死亡するという大事件でした。
この死亡した1人に高橋是清という蔵相がいて、この人は私の母校と深いかかわりがあったことから、昔からとても関心の高い事件の1つでした。
この事件の内容についてはたくさんの書物もでておりますし、Wikipediaなどでも詳細にみることができます。
先日NHKスペシャルで、この事件について新たな事実が判明した、と特集が組まれました。
二・二六事件は陸軍の青年将校とその配下の部隊が決起し、最終的に陸軍がそれにのらず、天皇の奉勅命令のもと「反逆」ということで4日間で平定しました。
この後陸軍上層部も更迭されるなど、陸軍で始まり陸軍で終わったわけです。
ところが、今回発見されたのはなんと「海軍」資料。
海軍が事件の第一報から収束までを分刻みで記録したという、第一級(識者の見解)の資料が今年発見されたそうです。
その資料を分析したところ、これまで知られていなかった事柄が見えてきたというのです。
- 海軍が独自の情報網を築いていたこと
- 2つの密約が存在していたこと
- 海軍に決起部隊から接触があり海軍が調整役をやっていたこと
- 海軍は事件の一週間前には首謀者の名前、標的も含めかなり詳細の計画を知っていたこと
- 天皇は最初はどう対処すべきか心が揺れていた
それらの内容について記載することは控えます。
陸軍の青年将校当事者は、当時の上層部は処分されましたが、事件の影響を利用して陸軍は政治への関与を強め、わずか5年後に真珠湾攻撃を皮切りに戦争に突入するのです。
「陸軍はいざとなったら閣僚と言えども命を奪う」という”実績”をこの二・二六事件は作ってしまったのです。
だって首相秘書官、蔵相、内相、教育総監(陸軍大将)が暗殺されて首相も狙われたわけです。
小泉首相時代の飯島秘書官、今の財務大臣なら麻生副総理、内相は今でいうと国土交通大臣と警察庁長官を兼務したような人、陸軍大将は今なら自衛隊幕僚長クラスです。
こんな人達が一瞬で暗殺されてしまった。
政治家も財界人もこわくて陸軍への抵抗力を失っていってしまったんですね。
そして当時まだ不安定だった天皇の立ち位置も、今回を機に軍事上のトップとして神格化さえされてきたと識者は分析しています。
それを陸軍は利用し、戦争へ突っ走ってしまった。。。
そして結局二・二六事件で青年将校が目指していた「天皇を頂点とした軍事国家」が皮肉にも生まれてしまったんです。
私が驚いたのは、海軍が一週間も前に事件の計画をかなり詳細に把握していたこと。
にもかかわらず事件が起こってしまった。
大きな謎が残ります。
なにかしらの思惑があったでしょうがどのようなものかは想像するのも難しいです。
そしてその事実が事件から80年以上も闇に眠っていたんです。
番組の最後で識者がいっています。
「事実をしることはとても難しいことなんです」と。
なので今回の資料の発見は、とても意義のある発見だったようです。
今はこれが正しい、と思われていることも、いつか新しい発見や発掘を通じて「間違っていた」と見解が変わってしまうことがありうるということ。
軍国主義から民主主義
天動説から地動説
アダムとイヴ、アマテラスの大御神からダーウィンの進化論
鎌倉幕府の設立年
スポーツ部の水飲み禁止令
などなど・・・
少なくとも環境、価値観、歴史などは「これから変わりうる」という心構えが必要だと感じます。
とてもよく分析されてわかりやすく番組に仕上げていました。
いろいろ批判はあるようですが、NHKの作る番組は高い質のものが多い印象です。
今ならNHKオンデマンドでみることが可能です。