48歳からの挑戦

47歳で脱サラ、48歳で起業したおじさんの奮闘ぶりをご紹介しています

読書会〜「人間の経済」

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今回の課題図書は宇沢弘文著の「人間の経済」。

 

人間の経済 (新潮新書)

 

恥ずかしながら著者について全く知らなかったのでうが、経済学では重鎮中の重鎮でいらした方のようですね。

 

ローマ法王ヨハネパウロ2世と一緒に食事をして議論したり、中国の政策に意見したり、アメリカの大学でも運営面で活躍されたり、と日本だけでなく、文字通り世界を股にかけて活躍されていたようです。

 

写真ですでに仙人の空気を醸し出していますが・・・(^^)

 

 

 

 

本書はリーマンショックを機に2009年に企画され刊行にむけてプロジェクトが進んでいたのですが、著者は2011年に体調を崩して以来本書の校正に携わることができなくなり、そして2014年に他界されました。

 

言ってみれば経済界の重鎮宇沢弘文氏の最後の著作といってもいい書籍です。

 

宇沢氏は本にも書いた「社会的共通資本」という概念をまとめ、「人間は心があってはじめて存在するもので、経済はその手段に過ぎない」というスタンスを確立し、「経済が人間を支配する世界はおかしい」と行き過ぎた資本主義に警鐘をならしています。

 

また、水俣病患者に出会ってから環境保護に強い関心を寄せるようになり、熱心に活動をされていたことも本書に記されています。

 

 

 

著者から感じられるのは「心」とか「愛」。

 

人一人一人が心ある人生を送ることができるはずで、そのためには・・・という持論を展開しています。

 

戦争を経験し、世界各国でも様々な問題と対峙し、公害患者を目の当たりにし、強い憤りと悲しみに襲われたことは、少なからずの影響があったものと察します。

 

 

 

しかし、一方でこの思想、考え方は人間が持っている「欲」と激しくぶつかり合うことになります。

 

だから現実的に今の社会にその思想を反映させることは困難を極めることが予想され、そして現実にできていません。

 

どこまでを社会的共通資本とするか、という概念自体も人生観、価値観、欲などいろいろな要素によって千差万別の意見があり、全員を満足させることは極めて困難な作業となります。

 

見方を変えれば、全員が満足するという世界は多様性のない世界であり、結果ではなく恣意的に多様性を否定しないとありえない世界だったりします。

 

人を殺しちゃいけない、誰しもが正しいと思っていることでさえ、戦争と言葉を変えることで実に多くの人を殺して「英雄」扱いされたりしています。

 

無差別殺人をしかけたとテロ指定し、その社会を抹殺しようとすることも「正義」とされています。

 

 

 

一方である程度の共通の枠組みがあって初めて社会は成立するわけで、その社会があるからこそ人は生きていけます。

 

「私は誰の助けもいらない」という人がいるかもしれません。

 

でもあなたが来ている洋服は、世界のどこかで材料をつくって、うんぱんして、取引をして、工場に運んで、製造して、また運搬されて、店頭やネットで売られ、運搬されて届けられるその過程で実に多くの人を巻き込んでいることに気づいているでしょうか。

 

なんの道具もない誰もいない、そんな無人島で1人で一生生きていくことができたら、「誰の助けもいらん」とどうどうと言えるでしょうね(^^)

 

でも一人だったら自慢する相手もいません(笑)

 

 

 

話はずれましたが、社会の中で生きていくためには何かしらを犠牲に(あるいは我慢)することは避けられません。

 

その線引のしかたで受け入れられる人が多いか、少ないか、あるいはパワーが強いか弱いかといった具合に世界が分かれるのでしょう。

 

社会的共通資本という概念もその線引の仕方が現実的には大きな課題です。

 

どこまで共通資本としてとらえるか、どこから民間の自由意志に委ねるか・・・

 

 

 

シェアハウスの世界も近いところがあります。

 

何をシェアするのか、何をルールとするか。

 

その考え方一つで全く違った世界になります。

 

私は「心が通う社会であってほしいなぁ」という望みがあります。

 

ま、私はすっかり経済的に伸びるということから興味を失せてしまって、時間の使い方、仲間や社会への貢献といったところが主になってしまったので、「心」という要素はなくてならなくなりました(^^)

 

 

 

今の社会だからこそ、こういう宇沢氏のような存在が必要な気がします。