48歳からの挑戦

47歳で脱サラ、48歳で起業したおじさんの奮闘ぶりをご紹介しています

読後感想〜「社長失格」

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株式会社ハイパーネット代表取締役だった著者が、事業を立ち上げその拡大を目指して一時期20億円もの銀行からの融資をうけるに至るが、その1年後には37億円の負債をかかえて倒産、個人保証をしていた自分も26億円の負債を抱えて自己破産、という壮絶な体験を綴ったものです。

 

社長失格

 

 

実は2年前に購入して積読されていました。

 

購入記録をみると、読書会の直後に会場のCafeから発注した模様。

 

読書会のメンバーから推薦されたと推測(笑)

 

 

 

構成としては前半ー中盤ー後半という3部構成の印象。

 

前半:起業してベンチャーとして勢いをつけ始めたところ

 

中盤:ハイパーシステムというエース事業を立ち上げ期待値がMaxになるもほころびが生じ始めた時期

 

終盤:転げ落ちると一気に加速し倒産へ

 

巻末に舞台となった株式会社ハイパーネットの年表が掲載されていてこれをみると、文字通りジェットコースターのような展開であったことが伺えます。

 

1991年に設立、1995年についに黒字化を達成して、ハイパーシステム事業を構想し、年末には各金融機関から20億円も融資を受けることに成功します。

 

マスコミにも数多く取り上げられ、賞も受賞。

 

1996年3月期では売上7億円強、経常利益2億円弱まできます。

 

日本初のナスダック上場をソロモン・ブラザーズから提案され、この年の12月にはビル・ゲイツとハイパーシステムについて会談。

 

しかし1997年になってから状況は一変します。

 

銀行からの融資が途絶え、12月には破産宣告をうけるのです。

 

絶頂から驚くべき早さでの墜落・・・

 

 

 

著者も本書で触れていますが、1年で数年分の経験をしたようなスピードだったようです。

 

私のようなのんびり事業をしている人間からすると、このスピード感は超高速ジェットコースターに乗っているようで、読んでいるだけでも吐き気がでてくるくらいしんどさを感じました。。。

 

なんつう、濃すぎる時間を送ってきたのだろう。。。

 

その濃さといったら、そのへんの家系ラーメンのスープや、メタボリックな人の血管内を流れる血液なんてもんじゃ〜なぃ。

 

こんな濃い時間をこなせるだけでもこの人は卓越した能力を持っている人なんだなぁと思います。

 

 

 

では、なぜそんな能力を持った人が失敗したのでしょう。。。

 

著者は本書のあとがきでこのように触れています。

 

「組織に無理解な個人主義者」板倉雄一郎と彼の会社ハイパーネットは、奈落へと突き落とされた

 

(中略)

 

ぼくはまだ自分の経験から何を学べばいいのか総括しきれていない。

 

著者でもこの当時はまだわからなかった、ということでしょうか。

 

 

 

 

本書を読んでいると倒産の直接のきっかけは銀行の貸し渋りであることは明確ですが、著者はそれが理由とはしていません。

 

現実ハイパーネットが倒産する直前に、山一證券が廃業しています。

 

北海道拓銀長銀など多くの金融機関がこれを前後して破綻しているわけで、金融機関にはそれなりの切迫な事情があったわけです。

 

ただこの本を読むと、日本でベンチャーが育つ環境は当時は乏しかったんだなぁと感じざるを得ません。

 

アップルを除くとGAFAを構成するAmazonは1994年、Googleは1998年、Facebookは2004年に設立されています。

 

日本が金融護送船団が大揺れに揺れているときにアメリカでは今のネット社会を制覇する企業が産声をあげていたんですね。

 

 

 

 

そういう意味で時代の流れに翻弄された面はあったかもしれません。

 

バブルが崩壊して、ベンチャーを育てようという機運が生まれたときにその機運に乗ったものの、機運を作った金融機関がそれどころではなくなってはしごをはずしてしまった影響をもろにうけてしまった、と。

 

 

 

どうすれば成功なのか、は正直わからない(^^)

 

今をときめくGAFAでさえ、潰れるかもしれないというリスクはゼロではないはずです。

 

アップルだって、1985年にジョブズが追い出された後は低迷を続け1997年ジョブズが復帰したあとも「もうマイクロソフトにはかなわないだろう」と”失敗者”としての烙印を押されかけていたのです。

 

評価なんてものは「いつの時点」でとしかできないもので、その評価が未来永劫続くかどうかはまったくもって未知の世界です。

 

 

 

「どうすればよかったか」という議論は時として意味をなさないものですが、あえて著者に疑問をもつとしたら「誰のための事業だったのか」ということでしょうか。

 

「この事業は面白いから」ということであれば、自分のためかもしれません。

 

「この事業は役に立つから」ということであれば、利用者のためかもしれません。

 

「この事業は儲かるから」ということであれば、事業パートナーのためかもしれません。

 

「この事業は世の中に必要だから」ということであれば、社会のためかもしれません。

 

本書を通じて著者の事業の意図が今ひとつ感じられなかったのが正直な感想です。

 

なぜ会社を潰してはいけないのか、という大義名分にたどり着けなかったように見えたのです。

 

 

 

 

会社が転げ落ちて給料未払いになった時、「目の前にいる社員たちに迷惑をかけている」ということをやっと自覚した著者。

 

19歳から経営者しか経験のなかった著者に、始めから自覚を促すのは酷かもしれません。

 

なにか突き抜けた能力を持っている人は何かが欠けていても不思議ではないだろうし、それを責めることも筋違いかと思います。

 

ということは、その欠けている部分を補う人がパートナーとして存在することで、本人の良さが生きてくるのかもしれません。

 

敢えていえば、著者にとってのよきパートナーを持てなかったことも小さくない要因ではないかと感じました。

 

 

 

 

人に迷惑をかけることが嫌いで、臆病な私にはとても著者のような生き方は無理(笑)

 

だからこそこうやって実体験を赤裸々に本にして伝えてくれることはとても意義があると思います。

 

社長失格

 

なお余談ですが、著者がこの本を出すきっかけとなった本「シリコンバレー・アドベンチャー」の日本語訳の本のデザインがそっくり(^^)

 

もしかしたら「シリコンバレー・・・」に敬意を表したデザインだったのかもしれません。

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シリコンバレー・アドベンチャー―ザ・起業物語