読書会とは別に個人的に読んだ本です。
実家に行った時に珍しく父から「これ読んだんだけど、どうだ、読んでみないか」と渡された本です。
著者の青木理氏は以前に「日本会議の正体」という本を読んだ時にこのブログでも取り上げました。
父は学生運動のときの世代でもあるため、まず基本的に反権力派です(笑)
現政権に対してもいつも不満をもらしています(^^)
ここ数年は、めったに人のことを悪く言わない母までもが今の政権に対して失望感を言葉にするようになりました。
父も母も戦前の生まれ。
「このままではいつ戦争に巻き込まれてもおかしくない」と感じているようです。
戦争の記憶が少なからず残っている両親だからこそ感じるものがあるのかも。
そんな父が「まあ読めよ」と言ってきたし、青木氏の著作なので「きっと現政権に対する批判的なスタンスで語っているのだろうなぁ」なんて思いながら借りてみました。
この本は青木氏の短編コラムをまとめたような構成です。
実際毎日新聞に掲載したコラムもかなりまとまって引用されています。
「ジャーナリズムの役割」とは・・・
一言で言えば「権力の監視」そう青木氏は本書で述べています。
映画でも「スポットライト 世紀のスクープ」「ザ・ランドロマット パナマ文書流出」「大統領の陰謀」「ペンタゴン・ペーパーズ」といった、メディアが権力と戦って真実を暴露するという作品がいくつかあります。
これら映画に登場するメディアは、権力者が有する「武器」という「剣」ではなく、「文章」という「ペン」で戦いに挑み、いずれも当時の権力者の失策を暴いています。
青木氏は本書で「アメリカは政権にとって不利な情報だったとしても”記録”として残しているところに凄さがある。一方日本は平気で公文書を廃棄してしまう」と指摘していました。
日本では、現代に残っている歴史書のほとんどは当時の為政者が自分にとって都合のいい内容のみ、あるいは都合のいいようにすり替えて文字にして残していると聞いたことがあります。
なので最近でも歴史が変わった!といって、鎌倉幕府の開始時期が変わったり、源頼朝や足利高氏の肖像画が別人だったかも、なんて話になったりするわけで、日本の「記録」というものは「事実を残す」というよりは「当時の為政者がいかにすごいかを残すためのもの」が目的だったのかと訝ってしまうような気分になります。
この本では、「死刑」についてのコラムも少なく有りません。
青木氏が死刑制度に対して反対の立場をとっているのですが、「人を殺すことに大義名分があるのか?」という根本的な問いかけをしている気がします。
人1人殺せば犯罪だが、1万人戦争で殺せば英雄、みたいなことはおかしくないか?と。
人を殺すことを法律で認めていいのか、ということなんですね。
推測の域でも断言したりする嫌いはありますが、それでも青木氏の権力に対する厳しい姿勢は、「命」と「弱い立場」をおろそかにしてほしくない、という強い気持ちの現れなのかなぁ、という印象を持ちました。
なので、共感を感じるところはいろいろありました。
一方で「人間」ってたくさん汚れた面があって、集団になるとおそろしい行動をとりかねない怖さがあり、「社会を保つ」ということは、綺麗事だけでは収まらない現実にも目を向けないといけないかな、とも思います。
先進国の民主主義としていいのか!みたいなことを言う人がいます。
でも51%対49%だったら、51%の主張を選択して49%は自分の主張を放棄せよ、というかなり乱暴なシステムが民主主義だったりします。
沖縄の基地問題にしても「60%の県民が反対している」ことを無視していいのか、と指摘していますが、「では残り40%の賛成の声はどうなのか」という論点が欠乏しかねません。
「弱い立場の県民の声に耳を傾けろ」といっても、40%の賛成の人たちはさらに弱い立場です。。。
この人達の声をどう拾っていくのか。
話の進め方や行動のとり方、言葉の使い方など問題はたくさんあるとは思います。
誰かが満足するために誰かが犠牲を強いられるシステムで我々は社会を営んでいるからこそ、社会を運営していくということはとても大変なことです。
「全員が賛同するようでなければならない」は耳には聞こえはいいですが、これってダイバーシティーを真っ向否定しているのと同じだと思っているので、異質性、多様性の排除と変わりないんですよね。
な〜んか、頭が痛くなっちゃいます(笑)
話は戻りますが、青木氏が「メディアは権力の監視役」というスタンスはぜひ頑張ってほしいと思うし、メディア側もそれに値した言動にむかってほしいと思ってます。
そういう視点からすると、芸能人はある意味インフルエンサーとしての”力”を持っているので、広義の”権力”だとすると、人気芸能人のスキャンダルを暴くのもある意味権力の監視と言えなくもないかもしれませんが、私は芸能人の不倫ネタなどはど〜〜でもいいです(笑)