よく録画して観ている「世界で一番受けたい授業」で紹介され、興味をもったので読んでみました。
著者は日本人女性。
アイルランド人のご主人との間に息子さんがいらっしゃって、イギリスで生活を送る中、その子を通じて発見したことや気付きなどをつづった本です。
子供の視点の実直さ、するどさにびっくりです。
子供は天才、とはよく聞きますが、一番世界が見えているんじゃないだろうか、なんて思ったりします(^^)
多様な人種、経済的な格差、教育投資の多寡、これらは大人が作り上げた環境なのですが、子どもたちは実にたくましくその中で生きていく道を模索しているという印象を持ちました。
そして子どもたちが疑問に思うこと、とまどうこと、それらは大人が作り上げた世界に生じている歪や矛盾といったことが少なくありません。
その歪や矛盾によって大人たちがぶつかり合わないように、ルールや習慣ができあがっているんだろうなぁ、と。
著者の親子を軸としたエッセイは、著者の文章も素敵ですが内容も興味深いものが多く、読んでいるものを惹きつけます。
内容に対する評価は各方面で数え切れないくらいされていると思うので、ちょっと違った視点で。
私がこの本を読んで「へ〜」と意外感を持ったのは、経済格差の大きさです。
フリー・ミール制度。
経済的に恵まれない子どもたちが、ある限度額の範囲で給食を無料で食べられるという制度。
学校を欠席する子供を心配した教師が家庭訪問をすると、家族自体が食事代にも困っていたことがわかり、その教師が袋一杯の食料を差し入れた、というエピソードも紹介されていました。
それから制服のバザー。
これも経済的に恵まれない家庭では、子供の成長に合わせて制服を新調することができない子どもたちのために、サイズが合わなくなったりして不要となった制服を集めて、ほころびを直して、日本円で数十円くらいでバザーで出すものです。
日本でももちろん経済的に苦境に陥っている人たちはいます。
それでも私の狭い経験ではこれほどの格差は体験したことがありませんでした。
背景の一つは「移民」にあると思います。
何かしらの理由があって祖国を離れて移住をしたけども、そこの社会に受け入れられないことが起こり、結果として経済的に厳しくなっているという現状は少ないと思います。
経済格差、多民族コミュニティーといった現状は「移民」制度との関連性は少ないだろうということをこの本から感じます。
日本の今後についても人口減少が確定的な中で、「このままゆるやかに減少していったほうがいい」という意見もあれば、「移民を受け入れて人口を増やすべきだ」という意見もあります。
昨年のラグビーワールドカップでは、「日本人」の定義って民族的な視点だけではないんじゃないか、という一石を投じた気がします。
イギリスや、アメリカ、フランスといった多くの欧米各国は移民を受け入れて成長した国々です。
成長と課題、その両方を体験、直面しています。
日本が移民問題を語るときには、こういった国々から学ぶことがたくさんありそうです。
この本の帯に「読んだら誰かと話したくなる一生モノの課題図書」と書いてありました。
確かに(^^)
経済格差、多民族、性の認識、自主性、アイデンティティ、支援、社会活動、教育、家庭などなど、たくさんの課題がこの本の中には盛り込まれています。
その一部を切り抜いて、「どう思う?」なんて話がいくらでもできそうです。
これもいい本に出会いました(^^)