先日嬉しいニュースが入ってきました。
スーパーコンピューター(通称スパコン)の性能に関する世界ランキングで日本の「富岳」が4部門で世界一になったというもの。
コンピューターの計算速度、シミュレーションに使うことが多い計算方法や、人工知能の学習性能、それに、ビッグデータの処理性能を示す部門それぞれで1位となったようです。
前職で技術革新に携わった1人として、関係者の尽力に心から敬意を表します。
技術の進歩はまず”チャンピオン”となるデータを叩き出す、ことが進歩への第一歩になります。
つまり”限界”と言われている壁を打ち破るには、生半可のことではできないわけで、どんな手段を使ってでもその限界を超える技術を生み出さなければなりません。
この限界を超えることで、それまで最先端だった性能を発揮することがもっと楽になり、それがコストの低減につながり商品化へとつながっていきます。
ネット社会になって、真贋入り混じった情報を上手に「濾過」し、必要と思われるデータを探し出して「抽出」し、それを加工して我々に”使える情報”とするには、膨大な処理を必要とします。
なおかつ、その処理が早くて精度が高いことが求められます。
今回の意味は、「スピードだけでなく、学習能力や処理性能も世界一になっている」ということです。
2009年事業仕分けで「2位じゃダメなんですか?」という言葉が注目されました。
技術者あがりの私も「何わからないこと言ってるんだ」と憤慨していた1人でした(^^;;
昨年「富岳」の前に日本のスパコンを支えていた「京(けい)」が引退しました。
その際にあるジャーナリストが当時の「2位じゃ・・・」について記事を書いていて、「実は意味のある議論だった」ということを紹介してくれていました。
すなわち、当時は「スピード優先」で、一度世界一になってもすぐに追い抜かれるというすさまじい競争下にあり、スピードで世界一を目指してもそれがどう社会に貢献できるのか、という問いかけでもあったようです。
その後「京(けい)」は一度スピード世界一になるのですが、すぐに抜かれて第3位まで落ちます。
しかし「使いやすさに関係するCPU・メモリ間、CPU間のデータ転送性能は他のスパコンよりも優位、いわば使い勝手は世界トップと言ってよい」と評価されるようになり、いわゆる”キャラ変”したのです。
「富岳」の開発の方向性もその影響を受けていることだと推察します。
技術の限界を超えることは、経験上(注)とてもしんどいことなので、その後のことなど考える余裕を持てないことも珍しくないです。
(注)私がプロジェクトリーダーをやっていた製品は、商品化された製品の中では単位面積当たりの記録密度が世界一だったんで、誰も使ったことのないデバイスを搭載するなどかなり挑戦的だったんです(^^)
最近英語を教えてくれている原澤講師や岸講師を見ていると、「この人達は日本一の人たちじゃないだろうか」と思うことがしばしばあります(^^)
日本人に英語を教えることで日本一なら、きっと世界一と変わらないだろう、なんて思ったりも(笑)
身近にそういう方々がいらっしゃるのはとても刺激的です。
さあ、では振り返ってみて自分はどうだろう。。。
在職中は(注)にも書いてあったように世界一を目指していましたが、今の自分はとてもとても。。。
趣味一つとっても仕事一つとっても、数え切れないくらい私より優れた人たちがいます。
「2位じゃダメなんですか」なんて言われたら「2位でももったいないくらい」(笑)
ここでふと思うんですね。
何に対して1番とか2番とか言ってるのか、と。
スパコンや私の以前の仕事のように技術的で比較する軸がはっきりしているものは、順位がつけられます。
でも自分の人生で何と比較しろというのか。
たぶん”自分”なんでしょうね。
自分が”こうありたい”ということに近づいているいるかどうか。
だから順位は存在していなくて、「もっと頑張ろう」とか「もっと気楽にやろう」とか、”評価”ではなく”次への指針”に意味があるんじゃないかな、と。
時々自分に「これでいいのか?」と問いかけてくるもうひとりの自分がいて、元気があるときは「いいの、いいの」と笑っていられるんだけど、心が弱っていると「いいのかなぁ」なんてちと考え込んでしまうことも。
技術革新と人生は双極に存在する価値観なのかもしれない。。。