チャップリンの代表的な作品の一つ「殺人狂時代」がテレビで字幕放送していたので録画しておいたものを、先日やっと視聴しました。
「喜劇のチャーリー」から一転してシリアルなストーリーと痛烈なメッセージで、本人が生前に「最高傑作」と評していた作品です。
舞台はフランスですが、セリフはすべて英語(^^)
有名な作品ですが、実は内容をあまりよく覚えていないので、もしかしたらちゃんと観たのは今回が初めてかもしれません、お恥ずかしながら・・・。
30年努めた銀行をクビになった後、大金持ちではないがある程度資産のある女性を口説き結婚をしたあとに殺害して資産を奪うという”ビジネス”をしていたチャップリン演じるアンリ・ヴェルドゥ。
原題であるMonsieur Verdouxは「ムッシュ ヴェルドゥ」というフランス語表記。
途中までアンリは、いわゆる結婚詐欺&殺人という極悪犯罪者としてのスタイルが描写されています。
途中刑務所から出所したばかりという未亡人と出会い、ココロの中になにか変化がおきます。
そして大恐慌によって資産がなくなり、実際の妻子を失ったことで生きがいをうしなってしまったところに、富豪に嫁いだあの未亡人と偶然出会います。
そこで何かを悟ったのか、警察にみつかっても逃げようとはせず自ら捕まり斬首刑を言い渡されることになります。
そして死刑執行直前に、あの有名なセリフが登場します。
Wars, conflict - it's all business. One murder makes a villain; millions a hero. Numbers sanctify
戦争や紛争、これは全てビジネス。1人の殺害は犯罪者を生み、100万の殺害は英雄を生む。数が(殺人を)神聖化する。
この映画は1947年に封切りされましたが、チャップリンはこのセリフがきっかけでアメリカを去ることになります。
「赤狩り」の対象者として。。。
今はテロや暗殺といった裏の活動が主になってきており、必ずしも”数”にはよりませんが本質は70年以上たった今も変わっていないですね。
私は裁判で最後に被告人としての弁明する場面でのヴェルドゥのセリフが印象的でした。
世界は大量殺人を奨励しています。
大量破壊兵器を作るのは大量殺人のためだ。
そして罪のない女性や子供を吹き飛ばす
科学的な方法をつかって
大量殺人においては私は素人です
(中略)
みなさんとは程なくお会いすることになる、すぐにね
最後の「みなさんとは〜すぐにね」の部分は、自分は死刑によってあの世に行くけど、みなさんも戦争や紛争によって命をすぐに落とすだろうから、あの世で”すぐに”会えるね、という皮肉が込められているんでしょう。
野生の動物も家族、群れ、縄張りを守るために命をかけて戦うことが少なくありません。
ましてや欲をもった人間は古(いにしえ)から戦うことで自分のたちの富を増やしてきた歴史があるので、いまさらこのチャップリンのセリフが言うところの矛盾に答えるすべはないだろうな、という諦めの気持ちもあります。
人間は、なんて罪深くて、なんて恐ろしい生き物なんだろう。
だから欲望に任せるのではなく自制した行動が”みんなが生きる”上で必要。
でも”自分だけ”を考える人が力を持つことで多くの人が悲しむことになる。
この映画で晩年チャップリンが語りたかったことではないかと、完全に自己本位でそう解釈しています。