今回の読書会の課題図書はこちら「保身」。
積水ハウスでおきたクーデターとその背景にある「積水ハウス地面師詐欺事件」(以降”地面師詐欺事件”とします)について、関係者からのインタビューを通じて著者の視点でまとめられたものです。
積水ハウスのクーデターというのは、2018年に当時社長だった阿部俊則氏(以降”阿部”とします)が役員と結託し、自分をひきたてたはずの当時の和田会長(以降”和田”とします)を解任に追い込んだ役員人事のことです。
なぜクーデターを起こしたか、というと、実はその前年に起きた地面師詐欺事件における積水ハウスの対応がまずかった責任は国内事業責任者である阿部にある、というのが調査委員会で結論付けられ、その報告をうけた和田が阿部を解任せざるをえない、と動き出したことにある、と本書では説明しています。
本書ではこの地面師詐欺事件について詳細に記載されているのですが、これを読めば読むほど、私にはこの事件は「背任事件」の恐れがあるのではないか、と思ってしまいました。
理由はこちら。
- これが詐欺事件であることが怪しいと思われる事態が9回も発生している。
- 積水ハウス側で騙されるまでに9回も対応のミスをしている。
- 詐欺グループが使った架空会社の本社が政治家の事務所になっていた。
- その架空会社の取締役に事務所の住所を提供した政治家の妻が入っていた。
めっちゃきな臭いんですよね、この本読むと。
当時宅建勉強していた私でさえ、「こんな取引あり?」と思ったくらいですから。。。
わざと騙されてお金をどこかに回したんじゃないか、と思いたくなるような内容です。
取材は、クーデターを起こされた和田側の関係者が比較的取材に協力的で、起こした阿部側の関係者は取材にはあまり協力的でない感じだったので、内容とすると和田側からの視点に寄っているかもしれません。
素人の私でさえ、こんな印象を持つんだろうから阿部側の関係者たちは何か物言ってもいい気がするんですが、そういう記事も見当たらず、ということはますますきな臭いのか、なんて思ったりしちゃうんです(笑)
そこで、この本のタイトルに戻るわけです。
「保身」
自分の身を守るために、道理を曲げてでも行動する行為「保身」。
自己防衛は生物的本能でもあり、「保身」という行為はわからなくもない。
ただそこに、本来社会生活を送る上で培われてきた法律やしきたりといったルール、善悪の判断基準にもなる道徳感といったものに逆らい、無視し、踏みにじっていることを感じられることで、その生物的本能といえでも、というもどかしさを感じたりします。
この事件、未だに騙しとられたお金の行方が不明なんですね。
ハッピーエンドで終わるような話じゃないし、何かがスパッとはっきりわかるわけではないのですが、実際に起きた話で実在の人物が登場したノンフィクションは迫力があります。
自分はこういう会社の役員になれる才覚などみじんもありませんが、こういうことに関わらずに済んでいることが、幸せだと思えました(^^)