今回の課題図書はこちら、「私はアラブの王様たちとどのように付き合っているのか?」です。
著者は中東領域で事業を展開しているサラリーマン。
長年にわたって中東領域で活動し、王族から一般市民までいろいろな付き合いを通じて、中東の実態について紹介してくれている本です。
約230ページほどの新書ですが、文章は平易で内容もわかりやすいので、比較的さっくりと読めます。
日本人に対して「ちょんまげ」「羽織袴」「帯刀」のようなイメージを持っている海外の人がまだいると思われます。
それと同じことがアラブの人たちに対して思っている日本人もまた少なからずや。
- アラブには石油王がいる
- アラブは石油だけでなりたっている
- 王族支配で国民は虐げられている
- 女性の人権がぜんぜんない
などなど。
本書はナイーブな宗教の話にはあえて触れず、普段の生活スタイルにフォーカスして紹介してくれています。
内容はネタバレになるので割愛しますが、表面的ではあるものの、中東の中の湾岸アラブ諸国の今をちょっと覗ける気がします(^^)
中東の定義ですが、本書では東はイラン、アフガニスタン、西はヨルダン、南はイエメン、北はトルコの地域としており、ここでもそれに準じて使わせていただきます。
中東といえば、今の日本人にとっては「紛争地域」のイメージが強いと思います。
以前にもこのブログで、中東紛争のきっかけを作ったのがアラビアのロレンスを送り込んだイギリスであったことを紹介しました。
オスマン・トルコ帝国を崩すために反政府活動を支援し、帝国滅亡後は支援していた勢力から手をひき、フランスと勝手に領土分割を画策。
そして世界にちらばるユダヤ人に今のイスラエル地域への入植を勝手に認めてしまった。
後にイランでは社会主義国家が勢いを得ると米国がCIAをつかってこの政府を転覆させ、親米派のパーレビ国王をトップにすえますが、傍若無人な政治で国民の怒りをかい、ホメイニ師を中心としたイスラム教勢力による革命を招きます。
その後に発生したアメリカ大使館人質事件の模様は「ARGO」という映画で紹介されています。(これもブログでご紹介させていただきました)
アフガニスタンにも社会主義が台頭すると米国はCIAを送り込んで反政府ゲリラを支援します。
このときの反政府ゲリラの中心人物の1人がオサマ・ビンラディン。
このときは米国の味方だったのですが、米国のサウジアラビア駐留や湾岸戦争を機に
反米に傾き、2001年には9.11のテロを引き起こしています。
このように中東の情勢には欧米の利権確保の動き、米ソ対立の構造が大きく影響し振り回されている印象が私には強くあります。
ですが、この中東にはもっと根本的な対立があり、実はそれが中東の不安定性の要因の一つになっているかもしれません。
イスラム教は教祖ムハンマドの後継として、娘婿を支持したシーア派と弟子一派を支持したスンニ派に分かれて長らく対立しています。
イスラム教の中でスンニ派が約80%、シーアが約15%くらいで、スンニ派の大将がサウジアラビア、シーア派の大将がイラン、というざっくりとした区分けができます。
この対立が如何ともし難いらしい。。。
サウジアラビアは米国に寄り、イランは旧ソ連時代を含みロシアに寄っており、米ソ対立構造がここにも絡んで、状況をますます複雑化しています。
サウジアラビア、イランは日本にとって石油調達の主要国。
いや〜、なんとも複雑な地政学をもった地域です。。。
1日も早く紛争がなくなってほしいですね。