今回の読書会の課題図書は斎藤美奈子氏の「文庫解説ワンダーランド」。
文庫本で本文が終わったときに掲載されている「解説」、これに焦点を当てた本です。
そもそも「解説」は本文が終わった後の惰性で読むことが多く、ほとんど気にしていませんでしたし、言葉は悪いですが「おまけ」的な位置づけでもありました。
文庫本は、新刊として発売された後に価格を安くして提供されます。
なのでこの本でも「『解説』という付加価値がつきながら市場で安く提供されるのはいかがなものか、という人もいる」と触れています。
さて、そんなおまけのような存在だった「解説」ですが、実に多種多様でその内容も、言っちゃ悪いですが「玉石混交」であることが、この本を通じて知ることとなりました。
仮にもプロとして執筆業をしている面々が「解説」を書いているわけで、そのプロに向かって「玉石」とは大変失礼であることははなはだ承知していますが、この本を読むと「石」はたしかにありそう、と感じます(^^)
作品の時代背景や補足説明が加わった解説らしい解説もあれば、個人的な著者との関係をつらつらと書いているエッセイ的なものもあれば、表向きは作品をたたえつつも、著者への批判的な記述もあったり、推理小説のトリックの甘さをつっこんだり、と、解説のキャラも様々。
その解説に対して、この著者斎藤美奈子氏がまた「解説」しているという面白い企画でもあります(^^)
加えて恥ずかしながら、1つの本でも複数の出版社が発行しているものがたくさんあることも知りました^^;;
太宰治「走れメロス」なんて、新潮文庫、集英社文庫、角川文庫、ハルキ文庫、岩波文庫、文春文庫、岩波少年文庫、偕成社文庫、ポプラポケット文庫、講談社青い鳥文庫、角川つばさ文庫などなど・・・
そして出版社が異なると解説者も異なる。
なので、どの解説がどんな視点で書いているかということが比較できます。
この本では40冊前後の文庫本に掲載されている「解説」について「解説」してくれています。
夏目漱石、川端康成といった文豪、サガン、シェークスピアといった海外文学、庄司薫や田中康夫、渡辺淳一といった一時期流行ったもの、松本清張や赤川次郎といった推理モノなど、その範囲はとても広く、著者の読書愛もなんか伝わってきます。
著者の表現も読者に語りかけるような口語調で、あたかも斎藤美奈子氏と対談しているような感覚で本を読んでいる気がします。
ここはさすがプロの書き手ですね(^^)
おまけのようについている文庫本の「解説」ですが、それ自体も味わうことによって、1冊の文庫本をもっと楽しめるお得がありますよ、そんな紹介をしてくれている本です。