今回の読書会の課題図書はこちら。
1965年独立して間もないアフリカのルワンダにIMFから中央銀行の総裁として送り込まれた服部正也氏の、文字通り「総裁日記」です。
服部正也氏は、東京帝国大学法学部卒業後海軍予備学生となり、終戦を海軍大尉としてラバウルで迎え、1947年に復員して日本銀行に入行。1965年から71年までルワンダの中央銀行総裁、1972年に世界銀行に転出して80年に副総裁。諸々の社長や会長を歴任し、1999年に亡くられました。
ルワンダはアフリカ中央やや東寄りにある小さな国です。
ウガンダ、タンザニア、ブルンジ、コンゴ民主共和国に囲まれています。
1964年にベルギーが正式に独立を承認。
著者服部氏が着任したのはその翌年です。
以後経済発展を遂げてアフリカの優等生とまで言われるようになりましたが、1994年に100万人とも言われる大虐殺があり、世界を驚かせたことがあります。
本書は著者がルワンダ中央銀行から帰任した後1972年に出版されました。
日本はまだ1ドル360円で固定で海外旅行なんて高嶺の花の時代でした。
服部氏が独立したばかりの異国の地において、何を目指しそのために何が課題なのかを設定するプロセス、そして課題を見つけるために自分の目と耳と足を使って事実と向き合う行動は、まさに起業家魂に通ずるものを感じます。
社会貢献を軸とした応援される企業ビジョン
自分たちの権益を増やすことが主目的だった欧州の植民地政策とは逆に、ルワンダ人にとって幸せな方向を目指すことを自分の使命としていました。
データや定性的な事実関係を収集しそこから深く考察・分析をして判断材料にするという的確な判断基準
ルワンダ国民のためになる施策をつくるためには、ルワンダ国民のことを知らないとできない、と在留している先輩外国人商人ではなく、ルワンダ人と直接交流することで実態をつかもうとしていました。
上手に人を活用するための高いコミュニケーション能力
大統領を始めとしてときには抵抗勢力となる外国人商人や資金提供国の重鎮、国内のルワンダ人大臣などキーパーソンとじっくり話をしてたくさんの味方をつくっていました。
現場を理解できる確かな技術力
20年もの中央銀行の実務経験を始め、現地の人の技術がたりていないため総裁自ら仕訳をするなど、実務・現場にとても明るかったため、細部までチェックをすることが可能でした。
強いメンタル
技術面だけでなく、困難な状況でもへこたれない胆力、ルワンダ国民、家族といった大切な人たちを守りたいという愛情、面倒なことでも必要であれば厭わないという忍耐力、といったメンタル面の強さも伝わってきます。
もう50年も前のことですが、こういう方が今の世でもいていただけると、その組織は生き生きとして活動するんじゃないか、そんな気がしました。