48歳からの挑戦

47歳で脱サラ、48歳で起業したおじさんの奮闘ぶりをご紹介しています

読書会〜「レイシズム」

 

 

菊と刀」の著者として著名なアメリカの人類学者ルース・ベネディクトの翻訳版です。

 

人種を表すRaceから生まれたRacismという言葉、「人種主義」と訳されることが多いです。

 

Wikipediaの説明を借りれば

 

人種間に根本的な優劣の差異があり、優等人種が劣等人種を支配するのは当然であるという思想

 

という意味です。

 

アメリカ、欧州で見られる白人主義、ヒトラーに見られるユダヤ人迫害、中国・日本などで見られるアジア蔑視、ユーゴスラビア崩壊後に見られたセルビア人とクロアチア人の争い、など、いろいろなところでレイシズムを目にします。

 

さて、レイシズムの定義にある「人種」ってそもそも何でしょう?

 

私達はよく抵抗なく「人種」という言葉を使っていますが、それはどういう意味を表しているのかちゃんと考えたことがあるでしょうか。

 

「日本人」は、「日本人」という人種なんでしょうか。

 

では「日本人」という人種ってどう定義されるんでしょう。

 

黒髪で、瞳が黒く、背丈はあまり高くなく、胴長短足で、目が細く、角張った輪郭で、肌が黄色系で、顔の彫りが浅い、そんな人物が欧米の漫画で描かれていそうですね。

 

(笑)

 

でもそうでない人がたくさんいることは誰でも認められることです。

 

背丈が2メートル超える人もいれば、八頭身のようなモデルさんもいれば、目がくりっとした人もいれば、丸顔の人もいれば、肌が真っ白な人もいれば、顔の彫りが深い人もいます。

 

無理がありそうですね。

 

これは、「人種」を身体的特徴で定義しようとしているからたくさん矛盾がでてくるのです。

 

ルース・ベネディクトは、まず本書の第一部で「人種とはなにか」と問いかけています。

 

生物学的に純粋な人種なんて存在しておらず、実は文化によってくくられている、ということを丁寧に説明してくれています。

 

「日本人」一つとっても、日本列島は旧石器時代にはユーラシア大陸とつながっていたところがあり(日本海だって湖だったわけですから)、ユーラシア大陸ベーリング海峡アメリカ大陸とつながっていたわけで、大陸から様々な人たちが流入してきたことは想像できます。

 

縄文時代後期になって、農耕文化をもたらしたのは大陸の人たちであり、航海技術の発達に伴い、南の琉球や北海道、今のロシアや、旧満州あたりの遊牧民などいろいろな人たちが流入し、現地の人と混交することを繰り返し、今の我々がいるわけです。

 

柴犬とか秋田犬だったり、ガラパゴス諸島に住んでいる多くの生き物のような「純粋種」というものは存在しない、ということをまず理解しよう、と言っています。

 

そもそも生物学的には、我々は同じホモ・サピエンスという種で唯一生き残っているホモ・サピエンス・サピエンスという亜種に属した生き物です。

 

亜種に分類されたネアンデルタール人など他の人類はすべて滅亡しており、現在の我々ホモ・サピエンス・サピエンスでさえも、ネアンデルタール人の血が数%入っていることがDNA解析でわかっており、すでに純粋でないことが言われています。

 

血統書で大変な犬でさえ、イエイヌという亜種でひとくくりされます。

 

(余談ですが、ずっと分類をのぼると、ネコ目に属するんですね)

 

柴犬も秋田犬もセントバーナードも品種改良を重ねた結果生まれた「混血」です。

 

 

 

話がずれましたが、ヒトラーの「アーリア人至上主義」とかアメリカの「黒人差別」などは生物学的にはなんの根拠ももたない、ということを第一部で実例を交えて説明してくれています。

 

そして第二部で「レイシズムとは何か」と問いかけてきます。

 

ここで著者の見解が説得力ある説明とともに紹介されています。

 

この第二部は「レイシズムの自然史」と「どうしたら人種差別はなくなるだろう」という2つの章で構成されていますが、2つ目の「どうしたら人種差別はなくなるだろう」にかなり凝縮されています。

 

私もこの章にたくさんポストイットが貼りました。

 

歴史的にそれは政治的に、宗教的に利用されてきたプロパガンダであり、マジョリティがマイノリティを支配するための手段でもあった、とルース・ベネディクトは語っています。

 

誰かを劣等的にみなすことで自分の優位性を確保し、生命、権力、富を守り増やすための手段がレイシズム、というのが私の理解です。

 

そこに根があるため、ヘイトスピーチを繰り返すような人たちのように、マジョリティではない人たちも、小さな集団をつくって力を保持するためにこの手段を利用する人たちはなくなりません。

 

 

 

本書は世界恐慌からわずか10年足らずで、ヒトラーが勢いのあった第二次世界大戦が始まろうとしている社会情勢のさなか、1940年に出版されました。

 

今から80年以上前の著作にも関わらず、まったく古臭さを感じないどころか、何一つ現代も変わっていない現代人の心の貧しさを感じさせられます。

 

「○○ファースト」の発想しかり、大国同士のパワーゲームしかり・・・

 

でも、これが我々ホモ・サピエンス・サピエンスなんでしょうね。

 

生態系の頂点に立つことができた我々の最大の天敵は、我々ホモ・サピエンス・サピエンスかもしれません。

 

なお、古い資料ですが、2014年に発表された「The Deadliest Animal in the World」によると、人類を殺す生き物の順位が以下のように紹介されていました。

 

1位:蚊 年間725,000人

2位:人間 年間475,000人

3位:蛇 年間50,000人

4位:犬(狂犬病) 年間25,000人

5位:ツェツェバエ 年間10,000人

 

www.gatesnotes.com

 

なお、年は違いますが2019年では世界で約800,000人の方が自殺で亡くなられています。

 

自殺がなにか社会から受ける影響を背景にしていると拡大解釈すると、自殺・他殺含めて100万人以上が年間なくなっており、蚊を抜いて1位になりそうだ、と私は解釈します。

 

なお、2022年2月13日現在で、コロナ感染で亡くなられた方は581万人です。

 

私の根拠ない妄想ですが、コロナウイルスが何か意図をもって開発されていてそれが何かしらの理由で外部に漏れたことが理由と仮定すると、これも広い意味で人災であり、人によって人が亡くなる現象と感じてしまいます。

 

 

 

だいぶ脱線しましたが、この本は少なくとも私が生きている間はおそらくずっと通用する内容を見事に描写した本、というのが私の印象です。