イスラエルとエジプトのダブルエージェント、すなわち二重スパイと言われていたアシュラフ・マルワンを描いたスパイ映画です。
アシュラフ・マルワンはエジプトのナセル元大統領の義理の息子です。
舞台はイスラエルとアラブ諸国が中東戦争を展開していた1970年代。
中東戦争は1948年にイスラエルの独立をきっかけに、アラブ人とユダヤ人との対立として起こった象徴的な戦争と言われ、4回にわたって繰り広げられた戦争です。
ただ個人的にはこの戦争は「アラブvsユダヤ」という対立構造をみせていますが、もともとはイギリスの傲慢さが生んだ悲劇の一つだと感じています。
20世紀初頭にアラブ地域を支配していたのは1299年から続いたオスマン帝国で、利権を目論むイギリスがアラブの独立を約束することでアラブ人を支援することでオスマン帝国を滅亡に導きます。
このときに活躍したのがアラビアのロレンスで有名なイギリスのスパイ、トマス・エドワード・ロレンスです。
オスマン帝国を滅亡させたあとイギリスはアラブを裏切り中東を支配します。
そして世界で落ち着く場所がなかったユダヤ人にパレスチナ地域への入植を約束してしまい、ユダヤ人の入植が始まります。
次第にアラブ人とユダヤ人の摩擦が大きくなり、対処しきれなくなったイギリスはそこから逃げるように抜け出し、その結果イスラエルの独立をきっかけに戦争に至りました。
現在の中東紛争の元凶はイギリスにあると、現時点で個人的に解釈しています。
映画に戻りますと、この映画は第四次中東戦争が舞台です。
第二次中東戦争では軍事的にはイスラエルが勝利しましたが、外交的にはエジプトがスエズ運河を国有化できたことでアラブ側の勝利ともいえます。
第三次中東戦争はイスラエルの先制攻撃によって6日間でイスラエルの勝利で決着、イスラエルはパレスチナ全部を支配することに成功しました。
これによりエジプトのナセル大統領の評判はガタ落ちし、サダトが後を引き継ぎます。
第四次中東戦争は、エジプト側が失墜した領地奪還を目指して勃発した戦争になります。
映画の登場人物は実在の人物が主で、実話に基づいているため、リアル感はすごいです。
リアルなだけに、ストーリーは簡単には展開しませんし、少々わかりにくいところもあります。
実話に基づいていますがあくまでも映画なので、主人公は中東戦争を終わらせるために危険を犯して二重スパイをやったという展開になっていますが、本当に本人がそういう意思だったのかは不明です。
調べてみると、1981年にサダトが暗殺された後ロンドンに移住し実業家として活躍します。
サッカーでおなじみのチェルシー・フットボール・クラブの大株主でもあったようです。
しかし2007年アパートから転落して不慮の死をとげます。
何者かに殺害されたと言われていますが真相は不明です。
原作はThe Egyptian Spy Who Saved Israelというイスラエル人が書いた本で、2018年に映画化されています。
残念ながら日本語訳にはなっていないようです^^;;
IMDbのスコアは6.7とちょっと辛め。
※IMDbスコアは食べログ評価と同じようなもので、ざっくり7点後半だと評価高い印象のようです。
(参考にした記事はこちら:https://dogearmemo.wordpress.com/2018/09/27/netflix-movie-review-the-angel-part1/)
実際はかなりドロドロとした世界だったろうから真相はわかりませんが、映画ということで少しきれいなストーリーに仕上げている可能性がありそうです。
ま、だからフィクションとしての映画として楽しめるのかもしれません。
PG12指定ですので、それほど衝撃的な映像がでてくるわけではありません。
駆け引きを楽しむ人であれば、この映画、それなりに楽しめると思います(^^)