シリーズ7部作の第5部ということで登場人物の動向が段々と定まってきます。
基本短編の集まり、という構成なのですが、前作の第4巻は異例の長編作品でした。そしてこの第5巻はちょっと変化球があります(^^)
このシリーズは登場人物の五浦大輔の目線でナレーションされています。主人公篠川栞子に対しても、その母智恵子に対しても、他の登場人物についても、五浦大輔からみた描写です。
だから最初はミステリアスで段々と謎解きがされていくということが五浦大輔と一緒に体験できる楽しさがあります。
第5巻では、3話それぞれの後に「断章」が設けられていて、五浦大輔でない目線でのナレーションが登場します。
第1話の後の断章は、ホームレスのせどり屋志田の目線です。
実はここで第1話の核心に触れるんですね(^^)これがなかなか面白い。五浦大輔ではなく、志田の目線だからこそ、この種明かしに臨場感がでます。
第2話の後の断章は、篠川栞子の数少ない友人滝野リョウの目線。ここでもちょっとした種明かしが出てきます。
そして第3話の後の断章は篠川栞子本人の目線。ミステリアスな存在であった栞子本人の胸中を晒すのは、本書においてなかなか踏み込んだ設定です(^^)
そしていずれの断章にも栞子の母、智恵子の存在が絡んできます。
さて中身ですが、第1話は「彷書月刊」。古書と古書店をテーマにした情報誌で1985年に創刊された雑誌です。2010年10月をもって休刊となっているようです。