4月15日にNHKスペシャルとして放送されました。
(画像:NHKホームページより引用)
以前にこのブログでも紹介した、「王将戦7番勝負」の模様をドキュメンタリーとしてまとめた番組です。
8つあるタイトルのうち6つを保持し、挑戦者をことごとく退け、タイトル以外のメジャーな4つの棋戦にすべて優勝、そして7つ目のタイトル「名人戦」の挑戦者としてタイトル戦に登場するなど、破竹の勢いである藤井聡太六冠。
その藤井六冠に王将戦で挑戦者となったのは、将棋界唯一の七冠(当時の全タイトル)保持経験のある、平成のレジェンド羽生九段。
藤井六冠は若干20歳に対し、羽生九段は52歳。その差32歳差。
羽生九段が七冠をとった全盛期は1997年で藤井六冠はまだこの世にいませんでした(^^)
頭の回転力だけでなく、集中力の持続、体力も必要とされる将棋は、若手が有利というのが一般的な見方。
実際来季の将棋界トップといわれる名人戦A級に所属する10名と名人戦を争っている2名は全員が40歳未満。
50歳を過ぎてタイトル戦に挑戦をしたのは歴代4人目らしいです。
1940年 土居市太郎(52歳)
1971年 升田幸三(53歳)
1990年 大山康晴(66歳)
そんな羽生九段がどんな心境でこのタイトル戦を戦ったのか、本人、周りへの取材を通してまとめられています。
この番組で出てきたキーワードは「あそびとゆらぎ」。
今やAIの実力が高くなり、多くの番組で「正解手」としてAIの分析結果が表示されるような時代にあって、羽生九段は「AI将棋も1年もたてば新しいバージョンに駆逐されるわけで、それはすなわち今のAIでも間違いがあるということ。だからAIにすべてを委ねるのはちょっと危険な気がする」と独自の見解を示しています。
羽生九段は若い時からコンピューターによる研究を導入するなど、旺盛な好奇心で新しいことに挑戦し続けてきたことを周りの人達が証言していて、今はAIを使った研究も導入しているようです。
AIが示す評価値で正誤を判断する風潮が強い現代にあって、将棋の可能性を追求し続けている、それが羽生九段の姿勢とみえました。
王者藤井六冠に対する気持ちを羽生九段はこんな風に言っていました。
野球に例えると(取材時WBCで盛り上がっていたので)、ものすごいバッターに退治するピッチャーが、どこに投げても打たれてしまうんだけど、それでもどこか打てない球があるだろうと投げてみて、それでも打たれる。
これがだめならこれでどうだ?みたいな”遊び心”っぽさが伺えます。(実際はそれどころではないくらい真剣だと思いますが)
「ただ勝つ」だけでなく「勝つために通る道にこそ」深い世界がある、「将棋ってとてつもなく世界が広いんだぞ」ということを81マスの将棋盤を通して語りかけているように感じました。
今シーズンもタイトル挑戦の可能性をもっている羽生九段。
その棋戦はいつも楽しみで、勝ち負けはあっても勝負の過程でいろいろな挑戦を感じさせられます。
もっとこんなドキュメンタリー作ってくれないかなぁ^^;;