岩波100冊プロジェクトはやっと10冊に到達し、11冊目はこちら、太宰治の代表作の1つ
「人間失格」です。
これまでの岩波文庫で初めての「緑」(現代日本文学)シリーズになります。日本文学の古典系は「黄」で、明治以降は現代日本文学として「緑」で区分けされています。
Kindle Unlimitedの無料利用期間で読み漁っている「まんがで読破」シリーズの第1冊目がこの「人間失格」でした。なかなかわかりやすくまとめてくれていて、大体の概要を掴むことができました。
で、太宰治の文章ではどう書かれているんだろう、ということで、本書を手に取りました。
1948年5月に脱稿されましたが、この後に書いていた「グッド・バイ」という作品を完成させることなく、翌月の6月13日に愛人と一緒に玉川上水で入水自殺をしています。
すなわち完成品としては、太宰治の最後の作品となったものです。
「恥の生涯を送ってきました」
始まりのこの文を知っている人は少なくないと思います。
「まんがで読破」ではあらすじをざっくり知ることができたので、本書では太宰治の”文体”を楽しんでみよう、と。
主人公が”私”であることから、自分について語るような文体。
なので書き言葉というよりは、話し言葉に近い文章で、1つの文が数行に渡るものがあるくらい、その文章の独特の流れとリズムと長さが印象的です。
有名な小説なので、あらすじをご存じの方も多いと思いますが、この主人公、なかなかの”ダメ人間”です(笑)
ですが、
・人が怖くて子供の頃から道化を演じている
とか、
・大人が怖くて逆らえない
とか・・・
実は自分もそういう面があったんじゃないかと、あまりひとごととは思えず、少々ぞっとさせられました。
左翼活動、自殺未遂、薬物中毒、女性関係などほぼほぼ太宰治の自伝ではないか、といわれているようですが本人がすでに亡くなっていることもあり、真意のほどは不明。
太宰治は8回も自殺を試み7回未遂に終わって、最後の8回目で絶命しています。
そして3人の女性と心中をはかって、2人が亡くなっている、というハチャメチャぶりです。
でもただ「病んでる」で片付けられない、なにかいろいろな人間の持ってる弱さを見せられているような気がして、不思議な存在です。
まんがで読破シリーズでは、もう一つ「斜陽」という作品を扱っていますが、主人公”かず子”のモデルは太宰治の愛人「太田静子」、かず子が愛する小説家は太宰治自身がモデルらしく、太田静子の日記がベースになっているんだとか。
不思議な魅力を感じる一方、気分が明るくなるわけではないので、愛読するか、といえば私は違う、かな^^;;
岩波100冊プロジェクトリスト
1 風姿花伝 青1-1
2 大地(一) 赤320-1
3 大地(二) 赤320-2
4 大地(三) 赤320-3
5 大地(四) 赤320-4
6 方丈記 黄100-1
7 生物から見た世界 青943−1
8 アラン 幸福論 青656−2
9 方法序説 青613−1
10 君主論 白3−1
11 人間失格 緑90-4