ワイマール共和国をご存知だろうか。
国王ヴィルヘルム2世が率いたプロイセン国時代と、ヒトラーが率いたナチスの時代の間に成立したドイツの国体です。
ヴィルヘルム2世がオランダへ亡命したことでプロイセンの帝政が終わり、第一次世界大戦の敗戦により巨額の賠償金を課されたときに成立した共和国です。
「当時ベルリンは世界最先端の、自由で、猥雑で、芸術性豊かな都市だった」というナレーションで始まったNHK映像の世紀「ワイマール共和国」。

(画像:NHK映像の世紀のホームページより引用)
全国民の平等など基本的人権を保証する憲法「ワイマール憲法」を作成し、地球で最もも自由な国を目指した、という。
イギリスやアメリカに先んじて女性に参政権が与えられ、女性の社会進出が進み、1日8時間労働が導入され、余暇を得ることができたそうです。
今の日本が直面している、女性の活躍、働き方改革といった課題に対峙することをすでに100年も前に実践していた国です。
1920年代、日本は大正から昭和に移行する時期。アメリカではバブル経済に浮かれる一方移民排斥や人種差別文化が根強く残っていた時代。イギリスでは同性愛は法律で罰せられていました。(後に、第二次世界大戦でドイツの暗号”エニグマ”を解読するために、現在のコンピューターの基礎構造を発明したアラン・チューリングは同性愛であったがゆえに、英雄だったにもかかわらず投獄されます)
国会議員の1割が女性だったそうです。(日本では2023年7月時点で衆参合わせて16%です。しかも平成8年(1996年)までは5%にも満たなかったんです)
憲法では、「言論・出版の自由(第118条)」「芸術・学問の自由(第142条)」が制定され、労働者の団結権も保証されていました。
失業時には失業手当も支給。すべての人に尊厳のある生活をする権利「生存権」も認められていました。
一方で、のちのワイマールを崩壊させる情報もありました。
革命後の混乱を鎮めるために制定された「緊急事態条項」。第48条にあった「大統領緊急令」です。「公共の安全、秩序を回復させるため、国民の基本権(人身の自由・住居の不可侵など)の全部または一部を暫定的に停止することができる、と謳われています。武力行使も認められます。
このときに躍進をしたのがユダヤ人でした。
音楽家、大銀行の頭取、大手百貨店経営などの多くがユダヤ人でした。お金はユダヤ人が握っているとみるドイツ人が少なくなかったそうです。
その後賠償金が払えない、ということで担保として工場をフランスなどに接収され、ドイツのマルクが大暴落。ハイパーインフレがおきたのです。
その後首相兼外相に就任したグスタフ・シュトレーゼマンが矢継ぎ早に対策を講じます。
まず全権委任法を制定。経済と財政に限り、国会の審議を経ずに首相が法律を制定できるという時限立法でした。
そして新たな通過「ゲンテンマルク」を発行。土地を裏付けていたため貨幣価値が安定しインフレを止めることができました。
アメリカと交渉しアメリカ資本の導入を図ります。アメリカのヨーロッパへの投資総額の半分がドイツ一国になだれこんだといいます。
また、スポーツやラジオ放送、映画が活況をみせ、LGBTQが集まるナイトクラブが大流行し、スポーツ・芸術領域が発展していきます性適合手術も行われていた模様。
1929年8月ワイマール憲法は10周年を迎えまさにワイマール共和国の絶頂にあったように見えたその直後、10月にワイマール共和国を牽引していたシュトレーゼマンが51歳という若さで急死してしまいます。
その3週間後、NYで株価の大暴落が発生。世界恐慌の発生です。
年が明けてドイツから大恐慌の影響をうけたアメリカ資本が撤退、大手銀行が倒産するなどドイツに一気に不況が襲います。
1932年の失業者は600万人を超えたといいます。人口は6,500万人だったので、国民の1割が失業していることになります。
段々と国民の間にワイマールに対する反発心が強くなってきます。
そこに登場したのが、何も決められない民主主義より、強いリーダーシップを訴えたヒトラーでした。そして同年ナチ党が選挙で第一党に躍り出ました。
そしてヒトラーは、憲法48条の大統領令、経済や財政以外にも対象を広げた全権委任法を利用して独裁政権を確立し、ワイマール共和国は終焉を迎えました。
ワイマール時代に発展したラジオや映画も、ナチのプロパガンダの道具して利用されます。
もともと金を握っていると思われていたユダヤ人への弾圧もこのころから始まります。
その後の歴史は多くの人が知るところです。
今ヨーロッパで右翼政党が勢力を伸ばしてきている状況、アメリカでトランプの支持が多い状況、日本で国家権力を強化する法律が次々と成立し少子高齢化で社会保障体制が崩れつつある状況、なんとなくですが、当時のワイマール共和国の歴史に重なる部分が少なくない印象をこの番組をみて感じました。
せっかく国民を守るために制定したルールを悪用する人物がでてくると、それは転じて国民を苦しめるルールになってしまう怖さ。
経済の苦境が、他社を排斥し自分を含めた小さい集団への利益に固執しようとする傾向の恐ろしさ。
歴史から学ぶことは、まだまだたくさんありそうです。