今回の課題図書はこちら。
我々日本人からみると、イランという国は正直馴染が薄い国という人は少なくないと思います。私もその1人。
イメージからすると、
・ペルシャ絨毯
・敬虔なイスラム教信者が多い国
・1979年の革命以来西側諸国とは一線を画している国
・アメリカ大使館占拠事件(映画「ARGO」に描かれています)
・バブル時代に代々木公園にたくさん集まっていた
・比較的親日の国
”この程度”です(笑)
本書はイランに長年生活してイランの公用語であるペルシャ語を自在に操れる日本人が、イランの国の内側から、そしてイラン人から見た「イランという国」を語っています。
独裁政権でもあるイランの体制批判にもつながるため、著者はペンネームとなっています(自分やイランの仲間たちに危険がおよぶ恐れがあるため)。
本書を読んで、いかに自分がイランという国や人について全くの無知だったことを思い知らされるくらい、驚かされる内容が満載です。
その根底にはイラン人の国民性が大きく関わっているように本書からは感じさせられますが、その国民性は太古からそうだったわけではなく、これまで大国に振り回されてきた歴史も大きな影響があったのかもしれない、と思わされるのも本書の記述から。
著者が付き合ってきたイラン人は、革命前からの名家の人からマリファナを楽しむぐうたらな若者までかなり幅広く、それぞれの立場における気質をよくとらえていながら、彼らに共通している部分をうまく抽出していること、そして我々にわかりやすく表現していることが、本書の秀逸なところです。
体制側、国民側どちらにも加担するわけでもなく、いい意味で一歩引いて落ち着いた立場でイランという国と人をとらえています。
・イラン人の多数派民族ペルシャ人は、アラブ人に対していい感情をもっていない
(だからイランとサウジアラビアは敵対している)
・イスラム教を強いられることに嫌気がさしている
・困っている人を助けることが当たり前の優しさ
・自分より優れているものに対する強烈なプライドと嫉妬心
・ルールに従わされることを嫌う”独裁者気質”
・チャドル(真っ黒な皮膚を覆う衣装)をまとった女性には気をつけろ
いろいろ驚くことや、「へ〜」と新しい知見が盛り沢山です。
イランは石油がとれる国です。
なので石油の利権に絡んで大国が横槍をいれてその権益をほしいがままにしてきた歴史があります。
革命前はそれが英米であり、革命後はロシア、中国です。
そういった大国に振り回されてきて気の毒な国、という固定観念がありましたが、「本当に気の毒か?」とちょっと立ち止まらせるような一面があることも、この本で気付かされます。
なんだかんだいってイランは中東の大国の一つ。
中東地域の和平実現に大きな影響を与える力をもっているはずで、今後の動向に目を向ける上で、本書はいい指南書になります。