今回の課題図書はこちら。久しぶりに小説です。
ChatGPTの練習を兼ねて、本書の概要を簡単にまとめてもらいました(^^)
『華栄の丘』は、春秋時代の宋という小国を舞台に、名宰相・華元の生涯を描いた歴史小説です。華元は、誠実で磊落(らいらく:気が大きく朗らかで、小さいことにこだわらないこと)な性格を持ち、策略よりも信義を重んじる人物として描かれています。物語の背景には、北の晋、南の楚という大国に挟まれた宋が、存亡の危機に直面するという状況があります。華元は名君・文公を補佐し、内政の安定を図る一方、外交では晋と楚の間で巧みな交渉を行い、宋の独立を守りました。宮城谷昌光らしい端正な文体と、史実を基にした緻密な描写が作品の魅力となっています。歴史に埋もれた人物を掘り起こし、誠実さと知略で道を切り開いた華元の姿を描いた物語です。
とのこと。
この本を選書した読書会の主宰は「上杉鷹山の中国版みたいかな」と言っていたのが、なんとなくわかります。
苦境に陥ってる国に、外から内から降り掛かってくる苦難を、卓越した考察と行動でときにはねのけ、ときにかわしながら国を守っていく姿は、確かに江戸時代の名君上杉鷹山(ケネディ元大統領が、尊敬する人物の1人として名前が上がった人物であるのは有名ですね)と重なるところがある気がします。
本書の面白さの一つは、名探偵コナンではないですが、手にした限られた情報から、これからどういうことが起こるのかを、推理していくところにあると感じました。
登場人物は実に優秀な人達が多く、「そうくるか」と思わされるシーンがいろいろとでてきます(^^)
言葉や起こる出来事の裏側を読む、みたいな要素がふんだんに盛り込まれています。
春秋時代は、中国が舞台で、紀元前770年周という国が首都を洛邑(らくゆう)に移してから紀元前221年秦の始皇帝が中国を統一するまでの期間をさします。
中国古代史で有名な時代の一つは小説「三国志」で有名な三国時代があります。
三国時代はこの春秋時代が終わってからさらに400年ほど後の時代になります。
日本では紀元前1000年から西暦250年前後くらいまでは「弥生時代」でした。卑弥呼が登場する古墳時代は、中国の三国志の時代に重なります。(魏志倭人伝に登場していますね)
そしてすごいのはそんな時代にもかかわらず、文字記録が残っていること。文字記録が残っているからこそ、これだけ古い時代まで遡って歴史を知ることができます。
その頃はまだまだ小さな村が散在しているレベルだった日本でしたが、中国ではすでに大きな国家の仕組みができあがっていて、周という王朝が存在していたことからも、当時では世界最先端の文明を誇っていた時代でもあったことが想像されます。
著者である宮城谷昌光氏は、漢書(漢文の書籍)の学びを通じて中国の古代史について文献を調査しそれを元に歴史小説を数多く執筆されているようです。
そのスタンスは今私がはまっている吉村昭氏とスタンスに共通点を感じ、今回を機に宮城谷作品も読んでみたくなりました。
史実がベースにあって、史実の隙間を小説で埋めた作品は、ベースが史実なので実にリアリティがあって面白いですね。
どの題材を選ぶのか、どこにドラマ性を織り込ませるのかが、まさに小説家の腕の見せどころと思いますが、吉村昭氏も今回の宮城谷昌光氏もさすがです。
中国古代を舞台にした小説は、先述した三国志を始め、項羽と劉邦(秦滅亡期)、水滸伝、キングダム(秦の始皇帝)あたりがかなり有名どころですが、他にもたくさん作品があります。
比較的儒教的思想が登場人物の価値基準の軸になっていることが多く、多くの日本人に共感できる部分があるのも人気の一要因かもしれません。
ただ今回の華栄の丘は、儒教の祖である孔子が生まれる前の時代なので(孔子は紀元前551年生まれ、と言われています)、また違ったテイストです。
