将棋の棋戦の中でも、「名人戦リーグ」はある意味”棋士の格付け”的な性格を持っています。
その名人戦リーグの第83期リーグ戦が3月11日のC級2組の対戦をもって終了しました。
名人戦リーグは上からA級、B級1組、B級2組、C級1組、C級2組と続いており、毎年4月から3月までの期間で開催されます。
トップにあるA級に在籍すると八段の資格を得ることができ、”一流棋士”の仲間入りをすることになります。
(ちなみに、B級1組に昇格すると七段、B級2組には六段、C級1組には五段にそれぞれ昇段することができます)
またタイトルの名人に挑戦できるのはA級で一番になる必要があります。
他のタイトルは全棋士に挑戦できる可能性があるのですが、名人だけはA級所属棋士にしかその権利はありません。
なので挑戦者は必ず八段または九段の段位を持っています。
竜王というタイトルができる前は、この名人というタイトルが最高峰と位置づけられていて、それが故に名人に挑戦する権利があるA級に所属している棋士は一流とみなされています。
対戦が終わると成績順に並べられ、各クラスの上位者が上のクラスに昇級、下位者が下のクラスの降級となります。
同じ成績の場合はそのクラスで順位が上の人が上位につくことになっています。
従って翌年のことを考えると1つでも順位をあげておきたいところで、昇級、降級に関係がなくても最終局まで”消化試合”は存在しないのは、そういった背景があるからです。
そして棋戦が終わって昇級、降級という悲喜こもごものドラマが生まれます。
ちょっとそれぞれのクラスの結果を覗いてみます。
A級
10人が所属し総当たり戦となります。
83期は永瀬九段と佐藤(天)九段によるプレーオフ(注)の結果、永瀬九段が藤井名人への挑戦権を獲得しました。

(画像:日本将棋連盟ホームページから引用)
注)名人挑戦者だけは同じ勝率で並んだ場合、順位の上下ではなくプレーオフで決定することになっています。
A級からは2人降級しなくてはならず、今年は菅井八段と稲葉八段が降級することになりました。
菅井八段はかつて王位というタイトルを持っていましたし、稲葉八段は名人戦挑戦者にもなったことがある実力者。なかなか厳しい結果です。
B級1組
13人が所属し総当たり戦となります。
ここは元A級という実力者と下から上がってきた勢いのある棋士がぶつかるところで、しかも13人の総当たりということで対局数も多く、その過酷さから「鬼のリーグ」とも言われています。
A級への昇級は、糸谷八段と近藤七段に決まりました。近藤七段は昇級を決めた段階で八段に昇段です。

(画像:日本将棋連盟ホームページから引用)
糸谷八段は先日叡王戦準決勝で王者藤井竜王・名人を破る金星をあげましたが、元竜王という強豪です。
近藤八段はNHK杯で準決勝まで進んだ勢いのある若手棋士です。
B級2組には3人降級するのですが、レジェンド羽生九段が残念ながら降級することになってしまいました。推しとしては残念です。。。
B級2組
今期は26人が所属しており、10局対戦があります。所属人数は不定です。
3人が昇級し、降級点が累積2点となった場合に降級します。(降級点の仕組みはちょっと複雑なので割愛します)
今期は服部六段、青嶋六段、伊藤叡王が昇級を決めました。これにより服部六段、青嶋六段は七段に昇段です。

(画像:日本将棋連盟ホームページから引用)
服部七段は先日も朝日杯という対局で藤井竜王・名人を破ったり、今期の勝率1位がほぼ確定していて、勢いのある若手棋士です。
C級1組に昇級してから3期連続での昇級。まさに上り調子です。
伊藤叡王は、藤井竜王・名人からタイトル戦を奪った唯一の棋士で順調に勝ち上がってきました。こちらも2期連続の昇級です。
最終局は自身が敗れると昇級の見込みがなくなるという土壇場で、見事に勝利し自分で権利を勝ち取りました。
C級1組
現在34名所属しており、10局の対戦があります。所属人数は不定です。
B級2組と同様、3人が昇級し、降級点が累積2点となった場合に降級します。
斎藤明日斗五段、藤本五段、佐藤七段が昇級となりました。


(画像:日本将棋連盟ホームページから引用)
注目は全棋士の中で最年少の藤本五段。伊藤叡王と並び、王者藤井竜王・名人のライバルになるだろうという期待の星です。
プロになってC級2組に所属して以来すべて1期抜けで2期連続の昇級です。
C級2組
現在54名が所属しており、10局の対戦があります。所属人数は不定です。
3人昇級で、降級点が累積3点となった場合にフリークラスに編入もしくは引退です。
ここの昇級争いはかなり熾烈でした。
最終局を前にして8勝1敗でトップにいた上野四段、山本五段を始め、7勝2敗は岡部四段始め4人もいて、大混戦。自力で勝たないことには昇級の可能性がないというギリギリでした。
結局最終局を自力で勝ち取った上野四段、岡部四段、すでに昇級を決めていた池永六段が昇級を決め、上野四段、岡部四段はそれぞれ五段に昇段しました。


(画像:日本将棋連盟ホームページから引用)
山本五段は最終局に敗れて昇級ならず。
このクラスは、昨年タイトル戦に2回も挑戦者となった佐々木大地七段や、多くの棋戦で上位の常連となっている梶原七段、八代七段など、「なんでこのクラス?」という棋士がゴロゴロいます。
個人的に気になっているのは、来季B級2組への降級が決まっている羽生九段の動向。
実は永世タイトルを持っている棋士でB級2組まで降級したのは、谷川永世十七世名人だけで、他の棋士は引退、逝去(大山永世十五世名人は現役のまま亡くなった)、フリークラスへ転身でした。
フリークラスへ転身すると、名人に挑戦することは事実上なくなる代わりに制度による定年が5年くらい伸びる利点もあります。
B級2組で挑戦を続けるか、フリークラス転身か、今月中に声明がでるのでは、と思われます。