吉村昭の著作『関東大震災』は、1923年(大正12年)9月1日に発生した関東大震災の実態を、膨大な資料と綿密な取材をもとに描いたノンフィクション作品です。
1973年に発表されて以来、日本の災害文学の重要作として高く評価されている作品です。
本書でも、作家・吉村昭の徹底した事実追求と記録精神が如何なく発揮されています。
著者は、官公庁の記録、新聞記事、生存者の証言、軍や警察の報告書などを丹念に読み解き、震災当日の状況だけでなく、震災後に生じた混乱、火災、流言飛語、そして朝鮮人虐殺事件などの社会的悲劇までを克明に調べ上げました。
単なる自然災害の記録にとどまらず、当時の社会構造や人間の心理をあぶり出した点が大きな特徴といえます。
特筆されるのは、震災後の混乱期における人々の行動の描写です。
極度の恐怖と不安の中で、人間の理性が崩れ、デマによって無実の人々が暴力の犠牲になる様子が淡々と記されています。
私は東日本大震災を経験した1人なので、「あ、確かにそういうことあった」と感じられる描写がありましたが、ほんの一部です。
それでもそういう体験が、この本にかかれていることを理解する助けにもなっていて、とてつもない震災だったことを感じることができます。
「災害は自然現象にとどまらず、社会的・人間的側面にまで波及する」んですね。
当時はラジオ放送もない時代。
というより、この震災をきっかけに情報を早く伝達する手段としてラジオ放送開局が後押しされた面もあるようです。
当時は情報伝達網が未熟だったがゆえの情報混乱。
現代はフェイク情報に代表されるように、デマなどの不要な情報の氾濫による情報混乱が起こり得ます。
想像を絶する破壊的な状況があったことを本書は伝えてくれます。
よくそこから立ち直ったなぁ、と当時生き残った人たちのパワーに驚きを感じます。
本書は小説、というよりは記録といったほうがよく、したがってほっこりするとか、心温まるといった要素がほとんどありません。
なので、読んでいると結構心が重たくなります^^;;
じっくり向き合う気持ちで読まれるといいと思います。
