今回の課題図書はこちら。
著者は世界有数のヘッジファンドにアドバイスを提供するコンサルタントを運営している齋藤ジン氏。
本書を手にするまで全く存じ上げない方だったので、いい意味で先入観なく本書にふれることができました。
本書の帯に本人の写真が写っているのですが、ぱっとみたときに「おや?」と。
もしかしたら・・・と思ったら本書を読んで納得。御本人がトランスジェンダーであることを公開されていました。
世界情勢や地政学的な話にそんなことは関係ない・・・かもしれませんが、本書では御本人がトランスジェンダーだからこそ身についた思考力について語られているので、実は大事な要素でもあるんです。
(どう影響があったのかは、本書を読んでいただいた方がよいかと思います(^^))
本書では世界の地政学的・経済的変化を著者の視点で整理し、現在が大きな大転換期であることを示して、日本が再び国際的な主導権を握る可能性が論じられています。
本書を読むにあたって、キーワードの一つが「新自由主義」という概念。
1980年代、アメリカのレーガン大統領、イギリスのサッチャー首相らが率先した「小さな政府」「市場主義」「個人の自由」を標榜した経済思想です。
それまでは、政府が主導した公共事業などが経済を牽引していきました。
特に戦後の日本は敗戦からの復興において、政府の公共事業は大きな原動力だったし、「護送船団」と揶揄されるほど、政府・民間が一体となって経済発展をしてきました。
ですが、バブルの崩壊とともに、新自由主義の潮流に乗り遅れ「失われた30年」を経験することになります。
やっと日本で新自由主義が浸透するのが小泉政権のとき。その前にも国鉄、各公社の民営化、金融ビッグバンなどで新自由主義が導入されてきますが、小泉政権のときに郵政民営化、規制緩和、特殊法人の解散などで加速されます。
でもこの新自由主義の反発が世界各地で顕著になってきたと著者はいいます。
新自由主義がもたらした弊害といわれているのが、
・経済格差の拡大で「貧困の固定化」や「中間層の衰退」が進行。
・「自己責任」「成果主義」の導入により、企業は人件費抑制を目的に非正規雇用を拡大し雇用が不安定化。
・「小さな政府」の思想に基づき、社会保障費の抑制が図られ、将来の不安が増大。
・市場競争の強化は、資本や人材の都市集中を加速させ、地方の経済・雇用が疲弊。
・公共インフラや社会サービスの民営化により、効率は上がったが、利益優先で弱者への配慮が後退。
・教育や医療への市場原理導入により、私立校や自由診療が拡大する一方、公的サービスの質や量が低下。
といった現象です。
その反発の表れが「トランプ現象(アメリカ中間層からの支持、移民排斥)」「ブレグジット(移民排斥)」「米中の対立」「ウクライナ戦争」など。
日本は乗り遅れた新自由主義ですが、その終焉を迎えるにあたって再び日本にも飛躍するチャンスがくる、というのが著者の見解です。
著者の見解に対しての是非はいろいろあるかもしれませんが、世間知らずの私にはとても勉強になる1冊でした。
戦後からの経済思想の変遷を大きな枠組みで触れることができたからです。
テレビやメディアを漫然と観ているとこういうことには気づかないですね。
この本を読んでから、「多くのテレビのコメンテーターは適当にしゃべってるなぁ」と感じることが増えた気がします(笑)
本書は一度何度かに分けて読了しましたが、もう一度一気に集中して読んでみたいと思います。
