久しぶりに課題図書以外の本のアップです。
先日まとめ買いしたうちの1冊。
著者は元気象庁長官で一般財団法人気象業務支援センター理事長という要職についていらっしゃる方です。
タイトルから自分が描いたイメージは、「紙の上の計算だったところに、コンピューターが導入されて計算が早くなり、人工衛星によってデータが増えたから」程度でした。
もちろんそれらの要素もあるのですが、さすがに本書はそこまで浅くはなかった(笑)
1983年に気象庁に入庁してずっと天気予報の変遷を見続けてきた著者だからこその視点と俯瞰度合いでした。
まずキーとなったのは「数値予報モデル」。
今あるデータと過去の結果と物理学を駆使して、ちょっと先のことを予測するというのが基本。
でもちょっと先って計算している間にすぎてしまって、もはやそこでは”予報”ではなくなってしまいます(^^)
だからその数値予測をつなぎ合わせてもうちょっと先を予測できるように発展しました。
そして計算量が増えてきたところで登場したのがコンピューター。
人間より速い速度で計算してくれるので、よりたくさんのデータを処理できるようになり、精度も上がっていきます。
技術的には、
・大量のデータを速く計算できるようになったコンピューターの出現
・どうやって計算させるか予測モデルをアップデートし続けた予報官の努力
・より多くのデータをより速く入手できるようになった人工衛星の進化
が大きな貢献要素だった、と理解しました。
ただ天気予報の予測精度向上の要因はこういった技術的な面だけでないという視点をみせてくれたのが本書です。
それは「予報技術を向上させたい」と思う”気持ち”と、それを支える世界中の”協力体制”。
「予報技術を向上させたい」と思う”気持ち”とは。
それは異常気象によって起こる災害から命を守りたい、という思い。
突然の夕立をもたらす積乱雲は範囲が小さくて発生予測が難しいそうです。
その発展版である線状降水帯も同様。
そして温暖化によって増えた降水量。
なおいまだに世界では(日本でも)温暖化を認めない人たちが多くいますが、本書では「温暖化は近年科学的に立証されている」という見解にたっています。
温暖化によってたとえば2019年の関東上陸した台風では(うちの実家の近くの多摩川下流があと数十センチで氾濫しそうになった)、温暖化の影響で10%ほど雨量が増えたそうです。
2024年9月、能登にもたらした大雨も温暖化によって15%ほど雨量が増加していたという計算結果がでています。
世界各地で豪雨による被害が発生していることをテレビやネットで見る機会がよくあります。
気候の傾向が変わってきているからこそ、予測モデルも現状に合わせていかなければならず、予測モデルもアップデートし続ける必要があります。
そして、天気予報が”防災”につながってほしい、という思いが現場に浸透しているという印象をうけました。
そして、大事なのは、”世界中の協力”。
「天気に国境はない」
著者が本書で語った言葉ですが、確かに国境は人為的に勝手につくられたものですが、天気には無関係です。
だから世界中のデータが常に的確に適切に共有される環境が必要です。
この”世界協力”は古くからあったそうです。協力することがお互いにとって利になることが、とても簡単に理解できるからでしょう。
そんな天気予報の世界ですが、とても多くの人と技術が投入されているわけですから「費用」がかかるはず。
でもジュネーブに本部をおくWMO(世界気象機関)は、無料・無制約のデータ交換、という姿勢をとっています。
気候情報は公共のものだから、公共機関で支え世界中の誰もが活用できるようにすべき、という思想の元です。
ですが、ここにも商業化の波がきます。主導したのはイギリスやフランスといったヨーロッパ勢とオセアニア。
一方商業化に反対の立場をとっていたのが意外にも米国。
どういう政治的背景があったのは知る由もないですが、自分が抱いているイメージとは真逆の立場です(^^)
本書の最後ではAIによる影響と今後の見通しについても触れています。
気候変動を自分ではどうすることもできないけど、少しでもできることを、と今日もエアコンの温度調整に励む私であった(^^)

