先日まとめ買いしたうちからの1冊。
著者の本郷和人氏の著作は、以前読書会で「歴史学者という病」という本で初めて読み、それ以来となります。
2021年から2024年は奥様の本郷恵子氏が所長を勤めていた東京大学史料編纂所の教授で、御夫婦揃って歴史学者でいらっしゃいます。
私よく録画して視聴しているNHK BSの「英雄の選択」という番組で、よくコメンテーターとして出演し、MCの磯田道史とともに、わかりやすくて楽しい歴史コメンテーターの1人、というのが私の勝手な位置づけです(^^)
本書はどういう本か。
本書の第1章の書き出しで著者がこう述べています。
歴史学は、史実がどうであったか、を先ず明らかにする。確実には捕捉できない、人の「ナマの感情」はあとまわしです。(中略)歴史研究者は、地道に史実を積み上げるべきだ。ぼくはそう教えられ、それに従って論文をまとめてきた。・・・・でも、正直なところ、もうあきちゃった。
(以上本書P.15から引用)
子供の頃から伝記や人物伝が好きだった著者。
歴史の史実の裏にある人間模様に興味があるといいます。
私も歴史が好きになったのは、まさにそういうところです。
史実は史実で大事。で、どうしてそういう行動をとったのか、どうしてそんな事態になったのか、という”ウラ”を覗いてみたいし、その”ウラ”の部分に醍醐味を感じます。
三国志がなぜ人気だったのか。登場人物それぞれに”ドラマ”を脚色したからだと思います。
兄弟の契りを交わした劉備玄徳、関羽雲長、張飛益徳の仁義の関係は、中国、日本の儒教の影響がある文化圏では、とても共感をもたらす演出だったと思います。
織田信長、豊臣秀吉、徳川家康についても、それぞれのキャラクターを際立たせる幾多の小説の存在が、大きな影響を与えたと思います。
本書は、歴史上のいろいろな人物にスポットをあてて、本郷氏の視点で、「こうだったんじゃないか」という独自の説を紹介してくれる内容です。
人物はほとんどが安土桃山時代から江戸時代初期にかけて。
秀吉、家康、謙信といった有名人から、可児才蔵、丹羽長重といったマイナーな人物まで幅広く取り上げています。
雑誌「サンデー毎日」のコラムを書籍化したものなので、内容が重複するところもいろいろあります。
全体を通して、本郷氏独自の視点を楽しませていただきました。
また、見解を異とする学者に対する厳しい指摘も随所にあって、本郷氏らしさが随所に見られ、読者としてはとても楽しかったです(^^)
楽しかったがゆえに、できればもっともっと突っ込んだ話を披露してくれたら、もっと楽しめたと思います。
日本の歴史は主に戦争と政治の話がメインです。
どちらも”個人の感情”が様々な判断に影響を与えたであろうことは、想像に難くないですが、当然のことながらそういったことは”記録”には残らないでしょう。
むしろ”抹殺”するでしょうね(^^)
だからこそ、その当時の人物の気持ちを想像するしかないのですが、それがまた楽しい。
それは数百年前に限らず、数十年前の為政者についても同様でしょう。
もし今の為政者の本音や私生活ぶりを日記なのでこっそり記録しつづけて、ずっと非公開で保存したら、100年後には一線級の歴史資料になるんじゃないでしょうか(^^)

