今回読んだ本はこちら。
東大の入試問題には良問が多い、という印象をかねてからもっていたこと、歴史に対してどう向き合っているのかと興味をそそられたことが購入理由でした。
読んでみて、期待通りの内容で満足です(^^)
東大の日本史入試問題に良問が揃っている理由について、「はじめに」で著者がふれています。
日本史の「知識」を問うのではなく、「思考」を問うから。
コンピューターやインターネットの発達で、「知識」は覚えていなくても何かしらの手段で手に入れることが、極めて容易になりました。
もちろん「知識」は必要です。
そして必要なタイミングで”引き出す”ことで初めて役に立つのですが、引き出した知識をつなげる作業が「思考」だと思っています。
つなげかたはいろいろ。
だからこそ「思考」は複数考えられることもありえます。
東大の問題が良問であるもう一つの理由は、問題文に無駄がないこと。
そこに書かれていることは一字一句何かしら回答に対して意味を持っているので、斜め読みしちゃいけません(笑)
見ようによって大きなヒントにもなりうる問題文。
ここ1〜2年、官公庁の作成した資料や文章を読む機会があります。
最初はまどろこっしいし、一文が長いし、文字数多いし、まぁ読みにくいことこの上ない文章、という印象を持っていました。
ところが色々と読んでみると、広く網羅していて、微妙に言い切らない表現方法になるほど、と思うことがちょくちょくでてきました。
官公庁が発する文章は、最終的には国民に向けるものが多いわけで、1人2人の人を無視する、といったことができないのが原則。
となると、どんな思想や嗜好だとしても適用できるような網羅性が必要で、かといって言い切ってしまうとどうしてもそのラインからはみ出てしまう人たちが生まれてしまうから、そういった人たちをも取り込める余地をもつ弾力性が求められたりするのかなぁ、というのが私の勝手な理解です。
すると一文が長いとはいっても、実は無駄な言葉をいれる余地はむしろなく、どれもそれなりに意味をもっている語句だったりするわけで、東大出身の人たちで官僚が多いのは、こういった特性もあったりするのだろうか、という妄想をちょっとしました(^^)
(実際はわかりません(笑))
そして難易度を上げているのが、「文字制限」。
ある程度筋書きは見えても、それを制限文字数に収めるには文章力が必要です。
60文字以内とか、120文字以内など、文字数は結構少ないです。
簡潔に、要点をおさえて過不足なく表現する技量が求められるところが、いかにも”総合大学”かもしれません(^^)
さあ、ちょっと難しそう、という印象を与えてしまったでしょうか。
そこで本書です。
本書のいいところは、その出題のテーマとなった時代について、わかりやすく最初に説明してくれているところ。
その説明をうけてから問題文を読むと、「もしかして」とちょっと自分が解答作業を疑似体験ができる気がします。
問題文の後に解説をしてくれるのですが、これがとても丁寧です。
当時の時代についての知識、問題文の意図、それらのつなげ方などなど。
読者が理解しやすいように優しい階段をつけてくれているようです。
扱っている時代は、飛鳥時代から昭和まで幅広いです。
扱っている問題のタイプも様々で、著者の選び方がなかなか味わい深い。
問題文にヒントがあるのでしっかり読もう、という東大の典型的な問題タイプはもちろん、過去に出題したときの受験生や予備校の回答がひどすぎたので後年もう一度同じ問題を出題して、当時の回答の何が問題なのかを問う、というユニークなものも。
著者も触れていますが、教科書はその時代における主流な学説を掲載し、新しく提起された学説は、学者間で議論の最中ということもあり掲載されない傾向にあります。
そんな議論沸騰中の話題に、あえて資料からどう読み解くか問いかけるという、なかなか冒険的な問題もあります。
つまり教科書に書いてあることと異なる見解を求めているのと同じです(^^)
さらにおもしろいのは、「伊藤博文と同じ調査団に加わっていたと仮定し、日本の立場として、政治体制に対して忠告してきたドイツに説明する文章を240字以内で作成しなさい」という問題(笑)
伊藤博文と同じ調査団にいた、ってそんなこと想像できないし、伊藤博文は名前こそ知っているけど会ったことないし(笑)
幕末直後でまだ辻斬りがあるような世の中(今で言えばナイフで斬りつける通り魔がうじゃうじゃいる、ということです)で、外国人は今なら宇宙人みたいなものだろうし、冷静に国のこと考えられるのか、と(笑)
当時おかれていた状況をまず「知識」で理解し、その状況に対してどのように問題意識をもち、その課題解決のためにどう行動するのか、という政策立案ともいえる総合格闘技のような問題です。
あ、「〇〇字以内で述べなさい」という文章の場合、その制限文字数の90%以下の文字数だったらだいたい必要なことが漏れているおそれが極めて高いです(^^)
必要事項をもれなく簡潔に表現するのに”必要な”文字数なので、むしろ文字数がオーバーして、それをどう簡潔にするか、と削り取っていく作業の方が王道です。
日本史が得意でない人でも、雑学的な本としても楽しめる一冊ではないか、と。
世界史でも同様の本があるようです。(著者は、その世界史版でインスピレーションを受けて本書を作成することにした、と本書で語っています)
私としては日本史の続編を出してほしいなぁ。

