すでに終了した読書会ですが、読書会当日に読了できていなかったので、遅れての投稿です。
内務省と聞いて「知っている」と思われる方、「え、それなに?」と思われる方、同じくらいいらっしゃると思います。
明治政府が樹立して、内政全体を司る部署として1873年に設立され、敗戦後の1947年に解体されるまで、日本の行政に深く関わった部署です。
本書はその内務省について、時系列でその活動を追っていく「通史編」と、内務省が持った役割ごとにフォーカスした「テーマ編」に分かれていて、「通史編」は4つの章、「テーマ編」は10の章で構成されていて、それぞれの章を研究者で分担して執筆する構成です。
全体で552ページという大作。
本書にも記載されていますが、内務省に関する資料は、内務省が数回火災に見舞われたことで多くの資料が焼失してしまっていて、その捜索、分析がかなり大変だったそう。
著者は「内務省研究会 編」となっていて、執筆者リストには25人もの名前が列挙されています。
明治維新後、国力を強化する手段として、”外征”に求める派と”内政”に求める派に別れ争ったのが征韓論で、外征を主張して破れた西郷隆盛らが下野し、のちの西南戦争を引き起こしたのは皆さん周知の話。
内政を主張して主導権を握った大久保利通が内政強化のために設立したのが内務省で、大久保が初代の内務卿(後に内閣制度が成立されて内務大臣と呼び名は変わります)に就任します。
「省庁中の省庁」と本書でも表現している内務省は、時代とともにその役割に変遷はありますが、内政について殆どの権限を持っていたと言っていいくらい強力な組織だったようです。
警察を監督する立場:今の警察庁
消防関係:今の消防庁
土木関係を監督する立場:今の国土交通省
健康、労働を監督する立場:今の厚生労働省
一時期は、大蔵、司法、文部以外はすべて内務省管轄ということもあったくらいだったそうです。
こういった歴史は、それ自体が直接的な目的をもたなくても、それ自体に意義があります。
研究会メンバーの尽力によって、内務省の生い立ち、政党政治との関わり、軍部との関わり、どんな社会課題があって、それにどう考えどう対応してきたのか、一端をみることができます。
その時代、その時代で、真剣に課題を向き合うこともあれば、権力争いが熾烈に繰り広げられたり、個人の思惑が絡んできたり、自分の意思とは無関係に世論に動かされたり、単純に良いとか悪いとかの世界ではない複雑さが伝わってきます。
いやはや、なにはともあれ550ページ超は読み応えありました^^;;

