時々このブログでも紹介しているNHK BS放送の「フロンティア」。
科学、宇宙、文化、歴史、芸術、ファッションなど 様々な分野でフロンティアを切り拓く“開拓者(フロントランナー)”たち 。
未踏の知の最前線、そこではどんな景色が見えるのか?
4Kスーパーハイビジョンによるダイナミックな映像で、あなたの世界観をガラリと変える 「至高の視聴体験」をお届けする。
(NHK「フロンティア」のホームページより引用)
先日放送された番組がこちら。
「未知の元素を求めて」
周期表はご存知でしょうか。化学の授業で教科書の巻頭もしくは巻末に必ず掲載されていた元素の一覧表。
受験のときに「すいへーりーべーぼくのふね」で覚えた方も少なくないでしょう。
原子番号は、その元素がもっている陽子の数で決まります。
原子番号が小さい元素は陽子が少なく、番号が大きいと陽子が多いので、少ない方は”軽い”元素、多いほうが”重い”元素と呼ばれます。
軽い元素と重い元素との境は、分野によってかわるようです。
現在自然界に存在する一番重い元素は原子番号92番のウラン。それ以降の原子番号はすべて人工的に作られたものです。
その中でも元素番号104番以上は”超重元素”と呼ばれていて、合成されても極めて短命ですぐに分解してしまいます。
今最も重い元素は原子番号118番で、世界の研究者は次の119番を目指しているらしい。
2016年に正式に名称がきまった原子番号113のニホニウムは、日本人研究者によって日本で合成に成功した元素です。
その時の研究者が番組でのインタビューに答えています。
その中で興味を引いたのは、当時のリーダーだった森田氏の発言。
「こんな重い元素を合成したって何の役に立つのか、と問われれれば『ない』としか答えられません。でもこれが数十年先に役に立つ可能性があります。」
それを裏付けるような一例が原子番号85番のアスタチンという物質で紹介されていました。
アスタチンが発見されたのは1932年。強い放射能と短い半減期(アスタチン210でも8.1時間しかない)のため、研究用以外に用途はないと言われていました。
それから90年も経った今、そのアスタチンを使ってがん治療を行う研究が進んでいるそうです。アスタチンががん細胞に直接くっついてそこからアルファ線を発することでがん細胞を死滅させる、というメカニズムです。
元素の周りにしかアルファ線の影響がないことから、正常な細胞への副作用が小さく、前立腺がんの治療などに治験が進んでいるそうです。しかも日本発の技術(^^)
一昔前は企業で何の役にたつかわからないような研究もやっていました。
”基礎研究”と呼ばれ、私が勤めていた会社でもそういう研究所がありました。
ところが、事業への貢献が見込まれない研究は承認されなくなり、自然と基礎研究は企業からかなり撤退することとなりました。
いつぞやは、当時の政府が(現在野党となっていますが)「これは何の役に立つのですか」と研究員を詰めて予算を切り詰めるというパフォーマンスを行ったのはまだ記憶に残るところです。
今できあがった、あるいは見つけたばかりの技術の卵が、これからどんな役に立つのか、なんてそんなに簡単に見通せるものじゃないような気がします。
特にここ10年、20年の世界の変化は目まぐるしく、そして早いので、1年先だって予測するのが難しいくらい。
かつて人事への毎年提出する書類の中で「10年後に自分はどうありたいかを述べよ」という問がありましたが、「Nobody knows!」としかいいようがありません。
前提となる環境がまったくわからないのに、”ありたい姿”でさえ語ることが難しい。
(そう考えると有名な大谷翔平の人生計画は恐ろしいほどすごみがあります(^^))
今最先端技術を扱う国家プロジェクトの活動にほんのちょっとだけ触らせてもらっていますが、役に立つと説明できない研究はやる意味があるのか、という風潮を若干感じます。

(画像:科学技術・学術政策研究所のページより引用:
科学技術指標2024・html版 | 科学技術・学術政策研究所 (NISTEP))
これが研究開発費の世界の推移です。(実質、とあるのは2015年の物価水準に合わせて年代ごとの物価変動要素や為替要素をできるだけ排除し、活動の量そのものの増減をみるようにしたものです)
赤いラインの日本は増えてはいるものの、1981年から2022年でせいぜい2倍ちょっとくらいなのに対し、世界一の額を誇る米国でさえ4倍前後、EUは5倍くらい、中国に至っては数十倍です。
ただGDP比率という観点で言えば、日本は、イスラエル、韓国、台湾についで4位ではあります。(米国は5位、中国は15位)
といっても分母のGDPは日本は下り坂ですから、比率は大きくなる方向ではあるので、世界4位といってもそのまま評価できるかどうかは怪しいところです。
電気自動車、宇宙産業、そしてAIといった研究活動が中心だとは思いますが、その裏で基礎研究に対してもかなり力を入れているのではと感じます。
先日ノーベル賞授賞式で北川氏、坂口氏と2人も表彰されていました。
彼らの研究は今行われたわけではなく、北川氏の研究は1997年に、坂口氏は1995年にそれぞれ発表した論文が評価のベースとなっています。
坂口氏はTregの発見自体は1982〜3年ころに博士論文としてすでにまとめていて、しかも学会ではほぼ否定されるという憂き目にあっています。
ノーベル賞として評価されるまで30〜40年かかっているわけです。
今のように、1年後、2年後に成果がでるか、なんて話ではないんですね。
もちろん短期間で成果がでることは喜ばしいことですが、一方で目が出ず、一見何の役にもたちそうもない”無駄な研究”が簡単にスポイルされがちな傾向にあるのが寂しいです。
非連続な大発見や大発明は、偶然の産物であることが少なくありません。
古くは「アルキメデスの原理」の発見から、「ノーベルのダイナマイトの発明」「レントゲンによるX線の発見」「キュリー夫人のラジウムの発見」「フレミングによるペニシリンの発見」「スペンサーによる電子レンジの発明」「ショックレーによるトランジスタの発明」などなど。
(Wikipediaで「セレンディピティ」で調べると事例がたくさん見れます)
無駄かどうかは「今」ではなく「未来」が判断すること。
「今」の我々が「将来」の可能性の芽を摘むことは傲慢なことではないか、私自身自分にも問いかけられているようです。
あ、「将来」にむけて種をまく、それが本来の”投資”なんでしょうね。

先日の朝食。ひさしぶりに洋定食にしてみました(^^)