今回読んだ本はこちら。最近ハマっている澤田瞳子氏の作品です。
「孤鷹の天」「満つる月の如し」「日輪の賦」に続く単著の4作目です。2013年の作品で2016年に文庫として発行されました。
時代は奈良時代は聖武天皇の世で、長屋王を中心とした皇族と藤原不比等の息子4兄弟を中心とした藤原家の勢力争いで緊張関係が続いている頃です。
登場人物は、後宮で働く采女(うねめ)の若子、笠女(かさめ)、春世(はるよ)の3人が中心です。
天智天皇、天武天皇が強力に進めた天皇を中心とした中央集権国家体制であった当時の日本は、天皇は絶対的な存在。
政(まつりごと)は藤原家や皇族、また地方の有力豪族などが司っていましたが、生活面については後宮が全面的に支える存在でした。
氏女は畿内(つまり奈良、京都あたり)の有力豪族が朝廷に献上した女官で、采女は地方豪族が献上した女官という違いがあり、この小説の書き方を引用すれば、現在の国家公務員のキャリアとノンキャリアの違いのようなものだったらしいです。
この後宮の采女という視点を通じて、当時の凄まじいまでの権力争いと微妙なバランスコントロール、女性たちの生き方といった様子が、実に生々しく、それでいて現代の花使用な親近感を感じさせるように描かれています。
話は時系列に第一話から第八話まで8つの短編で構成されています。
ノンキャリアの女性国家公務員が時の権力者である官房長官や幹事長と恋仲になってしまうなんていう設定は、現代漫画的な飛び道具のように感じますが、それでいて実は「続日本紀」を始めとした史料をつかいこなしたキャスティングが絶妙です。
これは解説に記載されていたのですが、中心人物の3人の采女には実在した人物がモデルとなっているようで、海上女王や安貴王、その妻紀小鹿といったマイナーな人物たちも実在しており、かなり史料に明るくないとこういったキャスティングができないように思えます。
一方で、笠女の年齢を変えたり、実在していない可能性のある紀小鹿の姪紀意美奈を登場させるだとか、さりげなく挿入しているところはさすがの技です。
一つ間違えれば命を簡単に失う緊張感、都といっても夜間一歩外にでれば安全が保証されない治安の悪さ、医療も技術も未発達がゆえに呪いや物怪(もののけ)といったことが信じられている常識感など当時の舞台背景を充実に表現しながら、「何のために生きるのか」「愛とは」といった現代にも通じるテーマが物語の底辺に脈々と流れているような印象が、澤田瞳子氏の作品の特徴かもしれません。
そして1人の人間では抗うことのできない大きな流れ。
この時代から1300年経っていますが、世界各国をみているとその流れは変わっていないと感じてしまいます。
人間の天敵は人間そのもの、ですね。
さて読んできた鎌倉時代以前の歴史小説の舞台をまた時系列で並べてみます(^^)
46代孝謙天皇〜48代称徳天皇(重祚) 澤田瞳子「孤鷹の天」
49代光仁天皇〜52代嵯峨天皇 永井路子「王朝序曲 誰か言う「千家花ならぬはなし」とー藤原冬嗣の生涯」
66代一条天皇〜69代後朱雀天皇 澤田瞳子「満つる月の如し 仏師・定朝」
当時の権力争いって、ホントドロドロですね^^;;

