今回の読書会の課題図書はこちら。
AIが全人類の労働を代行する「完全自動化社会」となった未来を舞台に、「仕事」の本質を問い直すSF小説です。
人類は超高度AI「タイタン」に生活のすべてを委ね、労働から解放された「遊生(ゆうせい)」を謳歌しています。
人々は働かなくてよい代わりに、心理学的に健全であることを求められる世界です。
そんなある日、世界を統治する拠点AIの一つが機能不全に陥ります。
それは、世界を統治する拠点AIは全世界で12個あり、そのうち北海道の摩周湖近くに設置された「コイオス」と呼ばれるタイタンです。
心理学の知見を持つ数少ない「カウンセラー」として趣味的に活動していた主人公「内匠成果(ないしょうせいか)」がこのコイオスをひょんなことから”カウンセリング”することになります。
全知全能のはずのAIがなぜ「働けなくなった」のか。
内匠成果はAIとの対話を通じて、これまで人類が忘却していた「苦痛」「責任」そして「労働」の意味を再発見していきます。
しかし、その探求は社会の根幹を揺るがす驚愕の真実へと繋がり、やがて人類とAIの存在定義を根底から覆す壮大なスケールの結末へと加速していきます。
本書は未来のAIを描いた小説のように見えますが、実は結構哲学的なことを内包しているように感じます。
「仕事をするってどんな意味がある?」
「生きるということは?」
人間よりはるかに能力の高い”仕事”をすることができる全知全能のAIが、機能不全に陥った原因を探るための”カウンセリング”を通じて、いろいろな視点から問いかけられます。
「AIが”カウンセリング”」?
知識、判断速度なら人間はAIには及びもつかない。
なんなら創造速度も人間はAIに及ばないでしょう。
そんな全知全能のAIが、なぜ機能不全になったのか。
ちょっとピンとこないですよね(^^)
たくさんの疑問符を持ちながら読む楽しさがこの小説にたくさん散りばめられています。
12体ある「タイタン」はギリシャ神話のティタン神族を参照にしていそうです。
仕事とは、という問いかけから、知識の集積の先にあるものとは、自我とは、人の生きる営みとは、文明とは、と次々と問いが生まれてくる様は、まさに哲学そのものかもしれません。
その過程で、他人とは、対話とは、論理とは、洞察とは、といった関連する問いが重なってきます。
そう、単なるAIの将来を描いたSF小説ではなく、今の私達が考える意味のある哲学の本、という印象をもちました。

