先日、羽生九段が棋聖戦挑戦者決定トーナメントの決勝まで勝ち上がったことをお話しました。
5月1日、その日がやってまいりました。
結果は・・・
すでに既報の通り、残念ながら敗退となりました。
しかも、大逆転負け。
142手目、対戦相手の服部七段が3七金と、「次に詰めますよ」とし羽生九段に”下駄をあずけ”ました。
服部七段の王様には詰み筋があり、羽生九段が4三金と打ち込めばそれで羽生九段の勝利となっていたのですが・・・
5一飛という別の手を指してしまって、これ服部七段の王様に逃げられてしまったんです。
これが敗着となって服部七段の逆転勝ちとなりました。
Youtubeで公開されていたLIVE中継で、チャンネル運営者が「羽生九段ならこの詰み筋は見えているはず。あと一手で挑戦者に」と語った数秒後、「あ、あ、あ〜〜〜」と悲鳴が聞こえてしばらく絶句・・・
LIVE中継といっても、対局しているところは放映権の関係があって表示ができず、指された手をテキスト表示するという方式だったので、Youtubeの視聴者は一瞬わからなかったのですが、しばらくして状況が判明。
しかも、感想戦で服部七段にはこの詰め筋が見えていて、「詰みがありませんでしたか?」と指摘すると、羽生九段は「えっ?」と。
終わったあとも羽生九段本人は詰み筋、すなわち勝っていたことに気づかなかったんですね。
最近の将棋界ではAIによる形勢判断が表示されるため、将棋を知らなくてもどちらが有利かということを知ることができるので、楽しめる幅が広がっています。
今回も142手目までは羽生九段が勝つ確率は100%もしくは99%勝利、という表示になっていました。
それが143手目の5一飛で、羽生九段の勝つ確率が一気に20%くらいまで下がってしまったんですね。
その後も粘ったのですが、万策尽きて羽生九段は投了(負けを認めること)。
そこでふと気づく人がいるかも。
「なんで、負ける確率が100%近い服部七段は諦めずに戦い続けたのに、負ける確率が80%くらいだった羽生九段は投了したのだろう。諦め良すぎ?」と。
これ、AIの形勢判断表示と実際に対局している棋士の感覚との違いがでています。
実際、羽生九段が有利な場面ではAIの形勢判断は羽生九段に圧倒的有利と表示していましたが、その有利を維持するための候補手が1つまたは2つくらいしかなく、一つ対応を間違えると形勢逆転してしまうくらいギリギリの攻防だったんです。
服部七段の猛烈な攻撃を交わして交わして王様を逃がしていた羽生九段。
しかも持ち時間が尽きて、残り3分くらいしかない中、読み切ることも大変。
一歩間違えると足を踏み外して滑落してしまうような山の尾根を歩いているようなものです。
そして、その一歩を踏み外してしまった後は、逆にどう指しても服部七段の有利な局面が変わらない、という服部七段にとっては真っ平らの大平原を歩くような安定した領域に入ってしまいました。
結果としては大逆転でしたが、ギリギリの攻防を繰り広げた羽生九段と服部七段の対局は素晴らしかった(^^)
AIが正解手を指し続ければいい、というものではなく、人が対局するからこその将棋の醍醐味を見せてくれました。
羽生九段は10連勝していましたが、一旦連勝もストップ。
羽生九段のタイトル挑戦は今回は残念ながら実現しませんでしたが、もう一つ王位戦でもチャンスがあります。
挑戦者決定リーグは紅組、白組それぞれ6人ずつ所属しリーグ戦を行い、紅組、白組のトップ同士で挑戦者決定戦を行います。
ここで羽生九段は紅組で永瀬九段と3勝1敗でトップで並んでいます。
この棋戦は3年前にも挑戦者決定戦まで勝ち上がりながら、佐々木大地七段(段位は当時)に敗れて惜しくも挑戦者になれなかった、ということがありました。
次の対局日はまだ未定ですが、勝ち上がってくれることを期待しています。

先週のマイブームは「豚ロース」。
なので”ほぼ毎日”豚の生姜焼きを食べていました(笑)