48歳からの挑戦

47歳で脱サラ、48歳で起業したおじさんの奮闘ぶりをご紹介しています

読書会〜みんなが手話で話した島

 

今回の読書会の課題図書はこちら。

 

1991年に出版された「みんなが手話で話した島」(築地書館、佐野正信訳)の文庫版で、ながらく単行本は絶版となっていたのですが、出版社、翻訳を一新して2022年10月に新たに出版されました。

 

舞台はアメリカ合衆国のマーサズ・ヴィンヤード島。

 

※日本語表記では「マーサズ・ヴィニヤード島」と表記されることが多いようですが、本書では「マーサズ・ヴィンヤード島」と表記されていることからこの表記に沿ってこのブログでは表記します。

 

場所はニューヨークの東側、ボストンの南側にある島で、マサチューセッツ州に属します。

 

いまでこそ、映画「ジョーズ」のロケした場所、ケネディ大統領の弟エドワード・ケネディが車で事故を起こし同乗していた女性を死なせてしまったチャパキディック事件の場所、ケネディ大統領の息子であるジョン(元駐日大使のキャロライン・ケネディの弟でケネディ大統領の葬儀で敬礼をしていた動画で有名)が自分の操縦する飛行機で墜落死したところ、ハリウッドスターや政治家などセレブ向けの高級避暑地として利用されることで有名ですが、ここでは、先天的聾者(ろうしゃ)が大勢いたことから健聴の住人も手話を当たり前のように使っていて、本土や現代でも見られるような差別や特別扱いもなく生活を送ってきた歴史があります。

 

※本書の訳者あとがきで「聾者」と「ろう者」と表記を意識的にわけていることに触れています。「聾者」とは純粋に「聴覚障害を持っている」人という定義で、「ろう者」は「言語としての手話を扱う人」という定義をしていました。

 

文化人類学者の著者ノーラ・エレン・グロースが現地に足を運び、文献調査だけでなく、まだ存命だった先天的聾者へのインタビューを通じて、マーサズ・ヴィンヤード島で聾者と健聴者が普通に共生していた背景についてまとめたものが本書です。

 

それは障害、言語、共生社会について深く考えさせられる内容となっています。

 

 

 

この島では聾者は全く特別な存在でありませんでした。それは健聴者も普通に手話を使って聾者と会話ができたこと、先天的なものだったのでどこの家でも聾者が生まれる可能性があり、身近にいくらでも聾者がいたことが大きな背景のようです。

 

18〜19世紀、聾者は「半人間」的扱いをうけて、差別対象となっていた本土側とは対象的な世界です。

 

この島では、耳が聞こえない、ということを「欠陥」として捉えてマウントして自分が優位にたとう、ということではなく、耳が聞こえない、という「ギャップ」を補うことで共生するという文化が根付いたことが伺われます。

 

古今東西、争いは常に「自分が優位にたとう」という欲望から生まれてきました。

 

それはときに「競争」という言葉で、進化を促す原動力として称賛されることも少なくありません。

 

それはそれで大切なことですが、「競争」という言葉が適用できるのは「定められたルール」の範疇での話。スポーツやゲームなど「競う」趣向だけど、逆に感動さえ与える「競争」はルールあってのこと。

 

事業もある部分は切磋琢磨することで顧客や社員に恩恵をもらたしますが、行き過ぎたマウンティングが進むと弱肉強食的な様相を見せはじめ、取引先の利益を奪うような行動が散見されるようになります。闇雲なコストダウン要求などいい例です。

 

 

ふ〜・・・こういうこと考えると気が滅入ってしまう^^;;

 

冒頭は調査における前提についての説明が中心になっているので、ちょっと退屈してしまうかもしれませんが、「共生」がこれからの社会におけるキーワードだと改めて感じさせられる本です。