今回の読書会の課題図書はこちら。
どんな本か
「幸せ」とか「幸福」って人それぞれの姿があるとても“主観的”な感覚だと捉えている人は少なくないと思います。
そんな主観的感覚を「幸福学」として“学術的な見地”から捉えて体系化に取り組んでいるのが本著の著者である前野氏です。
“学術的見地”ということなので、論理的で因果関係や根拠によって現象を説明することが一つの役割です。
序章で「役に立つ幸福学は」として、幸福学に至った背景について触れています。
科学技術屋としてスタートした著者が、その科学技術の進歩は人を幸せにしたとはいえないという結果に愕然とし、幸福学に至った思いが詰まっている章です。
第1章で「幸せ研究の基礎を知る」として、幸せの「定義」「測定の仕方」「影響を与える因子」「法則」について触れています。
ここで幸せについてどのように研究がされているか紹介されています。
体系的にメカニズムを解明していくにあたって必要となる基礎的な概念です。
第2章では幸せをモデル化、すなわち近似モデルをつくるために「四つの因子」を紹介しています。
第1章でたくさんの幸福に関連する項目が紹介されています。
ではこれらをすべて満たせば人は幸福なのか、といえば必ずしもそうでない。ではどれを満たせば幸福になるのか、それを調べて行き着いたのが「四つの因子」だそうです。
この本の中核をなす部分でもあります。
第3章ではこれまで紹介してきた内容を使って日本や世界がどうあるべきかを考察した「幸せな人と社会の創り方」です。
「つくる」を「創る」という字を充てたところに著者の思いがありそうです。
キーワード
いろいろなキーワードがありますが、私が幸せを考える上で気づきとして得られたのは「地位財と非地位財」「達人をめざせ」でした。
地位財と非地位財
本著によると経済学者のロバート・フランクが作った言葉だそうです。
地位はポジション、財はグッズ。
ポジションとは、「他人と比べて自分がいる立ち位置」のことで、グッズは「お金、あるいはお金に換算できるモノ」だけにとどまらず、社会的地位、健康、自由といった形のないコトも含むそうです。
地位財は「所得、社会的地位、物的財のように周囲と比較できる」もののことをいいます。
一方、非地位財は「他人が持っているかどうかとは関係なく喜びが得られる」ものです。
地位財の幸福は長続きしないのに対し、非地位財による幸福は長続きする特徴があるとのこと。
なんとなくぼんやりとしたイメージを言語化してくれました。
達人になる
世界人口を70億人とすると、70億通りの幸せがあると著者はいいます。
グローバルネットワーク社会がもたらしたものの一つが、縦割り社会から逸脱したフラット社会。
これは個々の特徴が問われる社会でもあるというのが著者の持論。
なるほど個々がそれぞれの腕を磨いていく。それは決して競争ではなく純粋に己のレベルアップであり自己実現でもあります。
「ナンバーワン」ではなく「オンリーワン」です。
すなわちその道における「達人」ということなのです。
これは私が会社を辞めて独立し、自分がこれから目指していきたい姿でもあります。
これから
独立してから自分の目指したいところ、方向性、姿勢などを多くの部分をこの本は言語化してくれているところは、私にとって有益でした。
自分が自分にとっての幸せを感じ取れるより具体的な表現方法を身につけることは、大きなプラスとさえ思います。
一方で、社会組織を形成することで生き残る選択肢をとったホモ・サピエンス、という生物学上、競争、争いは避けられない面もあるかと思っています。
著者も「バランス」という表現を使っています。
これから自分がどう対峙していくか、を意識し続けることも必要だと感じました。
本著で「幸せな人に人は集まってくる」「幸せは伝染する」という記載があります。
私もそんな気がします。
人を幸せにしたいのなら自分がまず幸せになることが必要条件というのが、昔からの持論でもありました。
そんな持論を後押ししてくれているかもしれません。