今回の課題図書はこちら。
なんとも不思議なタイトル(^^)
人間生活の「悩む」ことから一時的に逃げようとして取り組んだのがこれ、やぎになってアルプスの山を超える、というもの。
もともとは「象になる」というプロジェクトだったらしく、それにスポンサーがついていたのですが(スポンサーがつくこと自体がすごい!)、象は無理、ということでたどり着いたのが「ヤギ」。
スポンサーにはスイスへ旅立つ直前に報告というなんともどたばたですが、寛大なスポンサーは結果的に了承してくれます。
この「ヤギになる」はどういうことか、というと、ただ写真のようにヤギの格好をするだけでなく、ヤギと同じように牧草地で遊び、ヤギ小屋で過ごし、牧草を食べて(!)生きていく、というもの。
草を消化して糖分にするメカニズムも研究するという熱のいれようです。
この著者、かなりイカれているように見えますが、れっきとしたグラフィックアーティストで、本書で「上級クラス」を講義する、とあったので、それなりのレベルの人と推測されます。
そして哲学に対する造詣がかなり深そう。
本書は「はじめに」と第1章から5章までの章で構成されていますが、「はじめに」と「第1章」で彼の造詣の深さを伺いしれます。
世が世なら、デカルトのような思想家になっていたかもしれません(^^)
「人間ってなんだろう」とか「生きるってなんだろう」みたいな問いかけをされているようです。
第2章以降は、ヤギになるための思考変遷と試行錯誤について紹介されています。
私が思うに、第2章以降は彼の研究活動報告として面白いかもしれませんが、本書の本質は「はじめに」と「第1章」にあるのではないか、と感じます。
著者は、ヤギのプロジェクトの前に大学院の卒業制作として行った「トースタープロジェクト」が有名らしいですね。
トースターを原材料から作り上げる、というもので、鉄を入手するために鉄鉱石の鉱山に侵入したり、プラスチックや発熱体なども材料から作り上げたそうで、各国の博物館に展示され、ロンドンのヴィクトリア&アルバート博物館が購入し、パーマネント・コレクションに追加されたそうです。
すなわち、何事も初歩に立ち戻ることができて、そこから思考することができる能力をもっているのでは、と。
だから人間についても「生きる」とか「社会」といった、生活する上での根本的な問いかけを自らにして、それに思考を巡らすことができるのではないかと想像しました。
旧職でプロジェクトに失敗して放心状態だったとき、会社を辞めてこれからどうしようかと考えていたとき、そんなタイミングだったらこの本からなにか示唆を得たかもしれませんが、今の自分は現実を目の前にして四苦八苦している状態なので、正直今読みたいかと言われると、ちょっと・・・という印象でした。
現状への対処に「基本にかえる」は大事な思考プロセスではありますが、ちょっとレベルが違うかも(^^;;
むしろ、並行して読んでいる三国志の方が圧倒的に面白い(笑)
このヤギになるプロジェクト、イグノーベル生物学賞を受賞したようです。
ということで、ちょっと一風変わった本ではありました(^^)