今回の課題図書はこちら「知識人とは何か」。
著者サイードはアメリカ国籍を持ったパレスチナ人の文学批評家で、その筋ではかなり有名な方らしい。
本書は「はじめに」という序文と6つの章から構成されています。
BBCからの依頼で行ったリース講演の内容をまとめたものです。
「はじめに」で本書が発刊される経緯を紹介。
「第1章:知識人の表象」では、知識人が「公衆にむかって、あるいは公衆に成り代わってメッセージなり、思想なり、姿勢なり、哲学なり、意見なりを”表象”=”代弁”し肉付けし明晰に言語化する能力にめぐまれた個人である」と位置づけ、著者の「知識人」に対する定義を語っています。
第2章から第5章にかけて「国家と伝統」「故国喪失者と周辺的存在」「専門家とアマチュア」「権力」という外的要因に対して、知識人が受ける影響を語ることで、より知識人をリアルに語っています。
第6章では知識人が影響をうける権力者を「いつも失敗する神々」として語ることで、知識人のもつ苦悩部分にも視点をむけています。
ざっとした概要は上述の通りですが、実際読んでみると「はじめに」からして読むのが大変^^;;
文章が哲学的、思想学的で一文一文を噛みしめるように読まないとなかなか理解がついていけません^^
なので途中で止めるとそれまでの流れがわからなくなりそうだったので、1章ごとに一気に読むようにしました。
子供の頃に本をほとんど読まなかったという訓練不足が露呈してます(笑)
文庫本についている「解説」を先に読んで内容を把握しようと思いましたが、サンデーモーニングにも出演している姜尚中(かんさんじゅん)氏の解説がまた難解(笑)
私がこの本から感じたのは、こんな流れでした。
人は社会の中で生きている
社会はそれを統制するために組織があり、権力が発生する
その権力を暴走させないよう牽制するのが知識人の役割
しかし知識人といえども人である限り生きるために、権力・環境に寄り添うこともある
一方権力者はたいてい過ちを犯している
従って権力者、知識人ともに完全なるパフォーマンスをすることを期待するのは無茶
知識人は自分の使命を肝に銘じる必要がある
そして、ある程度過ちを受け入れる許容と、過ちを犯してもその過ちを認める謙虚が社会に必要
さっと読んだだけでの印象なので天下のサイードの透察の足元にも及ばないとは重々わかってはいるのですが、なんせ哲学・思想を深く考察する経験が少なすぎるので、なんとも浅い印象で恐縮です。
本来は新聞、メディアといった存在が知識人の役割を担う機関の一つだったのでは、と思わせてくれたところがあり、昨今の報道姿勢や適当なことで視聴者を煽る浅はかなコメンテーター達が残念に感じます。
1人の人間が全世界の動きや思惑を把握するには、世界はあまりにも複雑すぎます。
だからこそ、大きな力が暴走をすることを私のような”公衆”に変わって牽制する知識人(機関)が社会には必要なんだと改めて認識させられました。