今回の読書会課題図書は「甘えの構造」でした。
1971年の刊行というかなり歴史のある書で、長い期間に渡って読まれ続けている名著の一つでしょう。
著者の土居健郎氏は1971年の本著を発表したがその後増補普及版を出版、現在に至っています。
私は確か中学生の頃に国語の先生から本書を読むように言われて手にした記憶があります。
しかし内容はまったく覚えていません(笑)
いざ開いてみると、表現が何か古めかしいというか、今の我々にはぱっと見てわかるような文章でないことに直面します。
つい先月まで取り組んでいた宅建の試験で目にした法律文章、あれに近いものがあります(^^)
なので、正直読むのに苦労しました。
「甘える」とはどういうことか、いざ問われてみるとなかなか答えるのが難しいかもしれません。
何か「頼る」とか「おねだりする」そんなイメージがあるかもしれません。
著者はアメリカに赴いたときに、現地の人との会話に感じた違和感はどこからくるのか、考えていった結果、「甘え」という概念があってそれが日本人の心理に特異性をもたらせているのではないか、という仮説をもって研究を重ねてきました。
この「甘え」という概念は今で言うならば
- 承認欲求
- 依存性
- 相手に期待する
といった言葉や概念が合うのではないか、というのが読書会で議論されました。
義理と人情
他人と遠慮
内と外
罪と恥
被害感
自分がない
といった日本人に特有と思われる一面をこの「甘え」という視点で著者は「甘え」の世界を紹介しています。
そして天皇制やイデオロギーにまでこの「甘え」の概念が深く関わっているという論を展開しています。
これはじ〜っくり読まないとなかなか内容をとらえることが難しい(^^)
日本文化に特異的で日本語の関連性も極めて高いという「甘え」。
本著でも日本語話す英語圏の人が「この子はあまり甘えませんでした」というところだけ日本語で話をした、という紹介があります。
つまり英語で適当な言葉がない、ということのようです。
「甘える」を英語でどう表現するかぐぐってみると「be spoiled」が適当であろう、という記事があります。
でもspoilは本来「ダメにする」という意味でbe spoiledと受け身になることで「ダメにさせられる」というニュアンスを含んでいます。
これは我々も含めて普段感覚としてもっている「甘える」という概念と大きくかわらないですね。
しかもどちらかといえばネガティブな意味合いです。
でもこの本で言っている「甘え」というのはもっともっと広い概念です。
be spoiledだけでなく、expectでもあり、respectでもあり、shamedでもあり、be approvedでもあり、たくさんの感情を含有しています。
日本の社会、イデオロギーが甘えを前提としていて、甘えに起因している概念や言葉が実に多く取り込まれていて、それが日本独特の文化を形成している、というのが本著の主張のように思われます。
「この本を読んで結局何をしたらいいのか」そういう意見も読書会でありました。
確かにこれを読んですぐに自分の行動に何か活かそう、というものではなさそうです。
ただ自分のアイデンティティーや、他人の心境や深層心理を考察する際に、この「甘え」の概念が持てると、考察に深みがでるかもしれません。
AIの発達によって、「人の役割」とか「生きる意義」とかが問われてくる時代です。
先日ご紹介した「哲学」ではないですが、人という存在を考えるときに、示唆を与えてくれる視点かもしれません。
いや〜、それにしても難しい(^^)