シェアハウス投資が社会問題化?
「家賃保証」で誘われて銀行から1億円や2億円といった金額を借り、管理運営を誘ってきた会社に任せた会社員が、早々に支払いが減額あるいは停止され、資金繰りが苦しくなるという事態が発生しています。
これらいずれも会社が建物を一括で借り上げる「サブリース」と呼ばれる契約を結んだ物件になります。流れは以下の通りです。
- 不動産会社が物件を会社員に紹介します。新築物件であることが多いようです。
- 不動産会社は会社員に「◯◯年家賃保証」といったり、「毎月一定額で借り上げますから」と誘い「サブリース契約」を提案します。
- 会社員はこの不動産会社から紹介をうけた銀行からローンを受けます。この時不動産購入費用だけでなく、諸手続き費用もローンを7.5%といった高い金利で組まされる例もあります。
- 会社員は不動産会社と「サブリース」契約を締結します。サブリースによって入ってくる収益が銀行ローンの支払額を超えれば、だまってもお金が増えていく計算です。
- ところがこの不動産会社が突然支払を停止または減額します。するとこの会社員は銀行ローンの支払だけが残り、給与だけで支払えなくなる恐れがでてきたのです。
- 不動産会社に運営を任せっぱなしでシェアハウス事業をよく知らない会社員は途方にくれてしまいました。
こんなところです。
しかもこれらの物件、収益性を高く見せるために共有スペースがかなり小さくてシェアハウスとして機能しにくい物件が多くあります。このため、シェアハウスの運営会社は相談を受けても引き受けにくい状況が発生しています。
中にはまだ建物が建築途中という人もいます。工務店とかけあっても「今更中止、変更はできない」と言われ、建築費用の減額をすることが困難な状況に陥っているようです。
数百人規模で1人あたり1億円としても数百億円規模のシェアハウス不動産が全部と言わないまでも不良債権化する恐れもあるのです。こんな事態がおきています。
シェアハウスとは
明確な定義はないのですが、「キッチン、トイレ、浴室などの設備を入居者がシェアして利用する共同住宅」というところでしょうか。
よくあるのは、同じ玄関で、キッチン・リビング・トイレ・浴室(シャワールーム)・洗濯機が共用となっていて、大型テレビ、図書室、シアタールーム、トレーニングルーム、パーティールームなどを備えているところもあります。
個室にはベッド、エアコンなどがあります。物件によっては個室に冷蔵庫や机、ソファなどを備えているところもあります。1人部屋もあれば、2人、3人と複数の人が同じ部屋に住むドミトリーと呼ばれているタイプもあります。
大切なことは、「家族でない他人同士が、設備を共用し同じ屋根の元で生活をする」ということです。
生活環境を共有するという点が一般賃貸物件との大きな違いです。
シェアハウス投資の魅力
シェアハウス投資にはどんな魅力があるのでしょうか。
収益性
一戸建ての物件を一般賃貸として設定した賃料より、部屋ごとに賃料を設定した合計額がそれを上回ることがありえます。賃料はあくまでも相場と照らし合わせて設定されるので一概には言い切れませんが、シェアハウスのほうが高い収益を期待できるケースがよく見られます。
入居しやすさ
シェアハウスにはキッチン用品や電化製品が揃っていることが多く、自分で用意しなくていいので費用がかからないし、引越しもし易いです。これは人が入りやすいということでもあり、流動性が高いことは入居率にいい影響をもたらします。
空室リスク
一般賃貸は空きがでると、しばらく収益がありません。同じ物件でも部屋ごとに賃貸するシェアハウスでは1人が退去しても残っている利用者から収益が継続して得られます。すなわち、継続的に収益が得られる期待が高いということです。
シェアハウス投資の課題
一方でシェアハウス投資にも課題はあります。
管理
ひとつ屋根の下で他人同士が生活をしていますので、共有部をいい状態に保つことや、入居者同士のトラブルを防ぐことはとても大切なことです。一般賃貸はほぼ放置で良いのに対して、管理する労力は大きいです。住人同士、近隣とのトラブルで運営が行き詰まることもあります。
運営
いい管理状態を維持するために、オーナー自身が直接運営する方法もありますが、多くのオーナーは会社員だったりしてそのような時間がとれません。従って運営会社に管理を委託しますが、労力が大きい分一般賃貸に比べてその費用は高いです。運営会社によって費用は異なりますが、賃料の15%〜30%くらいが委託料として設定しているところが多いと思われます。運営会社がしっかり機能してくれればいいですが、そうでないところもあります。どこの運営会社に委託するかは大変重要です。
法令などによる制約
共同生活をする環境なので物件によっては用途変更が必要となり、そのために部屋の広さをある程度確保したり、窓を設置したり、採光を確保したり、法令を遵守するためにコストがかかります。また不動産を購入しますので、購入にかかる諸費用や税金、保有するために生じる固定資産税、また定期的に建物をメンテナンスするための積立金(物件によります)といった費用がランニングコストとしてかかることも意識する必要があります。
シェアハウス投資を収益性を計算してみる
多くのサラリーマン大家さんが不動産会社に任せてしまっている収益性の検証。投資家として本来ここは絶対手を抜けないところです。ただ「シェアハウス事業がわからない」とか「収益性の検証の仕方がわからない」といった人が多いのが現実です。
そこで、シェアハウス投資の収益性をどうやって検証するか、ここで簡単なガイドラインをご紹介します。
収支
事業は「PL(損益計算)」で利益を求めるのが一般的ですが、事業経験のないサラリーマン大家さんの場合は「CF(キャッシュフロー)」でまず検証しましょう。すなわち、お小遣い帳と同じで、入金と出金のバランスをみてマイナスにならないようにするということです。
この検証をする際に大事なのは「前提」です。どういう前提で計算をしたか、を明確にしておくことです。
売上
シェアハウスの収入です。これは「入居者の家賃の総額」だから簡単、と思ったら大変です。なぜなら「入居者の家賃の総額」は
これからず〜っと満室である
ことが前提だからです。また、設定した家賃が近隣相場と比較して高すぎないか、よ〜く確認する必要があります。
ここで設定する前提は「家賃」と「入居率」です。
- 家賃:近隣相場を調べましょう。シェアハウス物件を掲載しているサイト(ひつじ不動産、東京シェアハウスなど)で調べられます。いろいろな要素が家賃に影響していますが、「部屋の広さ」と「新しさ」を目安に調べてみて下さい。
- 入居率:1年中ず〜っと満室はかなり難しいと思ったほうがいいです。1人退去が出たらその翌日から入居するということは考えにくいですね。仮に1ヶ月空いたとすると1/12=8.3% が空室です。シェアハウスの利用期間はまちまちですが、1室1年と仮定すると、どの部屋も1年に1回は空室になります。次の入居者が入るまで平均で1ヶ月としたら、100% - 8.3% = 91.7%が入居率の期待値です。実際はこれでも順調ですから、私なら85%くらいの入居率で検証します。
すなわち売上の期待値は
家賃の総額x入居率前提(私なら85%)で計算することになります。
経費
次に経費です。運営会社に委託するのであれば、前述したとおり家賃の15〜30%に税金を加えた額が費用として請求されます。これが最も大きいです。
さらに家電製品や食器といったものが故障したり、破損したりとちょこちょこあります。この時のための費用をある程度積み立てておいた方がいいです。大きい金額の家電製品であれば購入額を耐久年数で割ると、1年あたりの費用のイメージができます。それらを積み重ねるとどれくらい費用を積み立てたほうがいいか計算できますね。
税金
固定資産税は当然ですね。PLの知識があれば、収益が上がった時にどれくらい所得税・住民税がかかるかを計算しておくといいです。馬鹿になりませんから。
おわりに
本来は出口戦略も考えるべきですが、私の経験が不足しているのでここでは触れません。それでも大事なことは、すくなくとも収益性の検証をしっかり行うという努力を怠らないことです。ここを人任せにして検証結果を鵜呑みにすると、現実とのギャップに苦しむことになります。
また、シェアハウスを収益物件としてみなすのはいいのですが、「利用者が住むところである」ということも意識していただければと思います。良い住まいであれば、入居率は結果的に高く維持できます。
本記事が少しでも検討のお役に立てればと思います。