今回の読書会の課題図書は、いつもとちょっと毛色が変わって「物流」がテーマです。
世界史に影響を与える要素は、英雄、国の仕組み、自然災害など様々な要素があるけど、物流に着眼した見解に挑戦した本。
紀元前2,000年前後のフェニキア人から現代に至るまでの物流の歴史を通じて語られています。
本のタイトルから、「いかに物流が世界史に影響を与えたのか」という内容を期待させられますが、そういう面は認めるものの、ここに書かれていることがすべて因果関係で物流起因かというと、そうとは言い切れないかな、という印象を持ちました。
例えば、中世に物流は地中海沿岸の国からバルト海近辺の国々に主役が移りますが、これはイタリアなど地中海側の自然破壊と、再生速度が需要速度に追いつかないという自然環境問題が根底にあるわけで、物流はどちらかというと「その結果」生じたという位置づけにも解釈できます。
ただ、物流を抑えたものが経済の主流となるのは古今変わらないようで、物流の歴史書として簡単に把握するには、とても有用な書物だと思います。
紀元前のフェニキア人から始まり、中国、イスラム王朝、バイキング、地中海貿易、バルト海・北海沿岸地域、喜望峰ルート、東インド会社、オランダ、イギリスと産業革命、アルメニア人、セファルディム、イギリス航海法、アメリカの誕生、西欧からの移民、などなど・・・
重要な要素それぞれについて簡潔にどういうものなのかを説明してくれています。
物流について明るくない私にとっては、薄いながらも見識の蓄積という意味で、楽しめました。
最後の章で、社会主義が滅んだ理由は物流を軽視したことにある、というまとめをしているのですが、若干無理がある気はします。
物流を軽視したことが理由、ではなく、その時の為政者の方針があり、その結果物流が機能しなかったという関係だと思っており、当時の為政者たちが物流を改善したとしても、それぞれの社会主義国が生き残ったかというと、そうは思えないのです。
ま、そういったツッコミどころがあるのも、本の面白さ。
著者は多くの研究活動を通じて、本書に内容を凝縮して出版したと想定されますので、私の見解についていろいろ補足してくれるかもしれません(^^)