(画像:NHKスペシャルホームページより引用)
東京電力福島第一原発事故(以降”原発事故”)の直後から、専門家とともに独自の検証を続けてきたシリーズで、12年たってようやく見えてきた「安全対策」の根幹に関わる新たな事実に迫っていくドキュメンタリーです。
先日知人からたまたまこの番組のことを教えてもらい、今になってわかってきたことが詳しく解説してくれている、ということで早速NHKプラスで視聴しました。
前編は事故の全体像を伝える「実録ドラマ」で、1000人を超す関係者の証言や未公開の調書など元に、3つの原子炉がメルトダウンし、放射性物質を大量放出した3月11日~15日の4日間を、科学的検証と合わせて時系列です。
(NHKスペシャルホームページより説明文抜粋し引用)
後編は、この12年間の検証で核燃料を冷やすための「水」が事態を悪化させていた可能性が明らかになり、その内容について解説してくれています。
「水ジルコニウム反応」
これが12年間の検証で新たに浮かび上がったキーワードです。
核燃料で使われているジルコニウムという金属に水が反応すると、高熱を発するという現象。
つまり核燃料を冷却するために投入した水が、水ジルコニウム反応速度に負けなくらいの量で冷却を続けられればいいのですが、その量が足りないと、逆に炉の中が高温になって状況をさらに悪化させる可能性があった、というのです。
これまでは、消防車から水が供給されていた3号機より、消防車の燃料切れで水が供給されていなかった2号機の方が損傷が大きいと思われていたのですが、メルトダウンして炉の下にたまった核燃料のゴミである「デブリ」の量を測定すると、圧倒的に3号機の方が多く、3号機の方が損傷が大きかったことがわかりました。
その理由が先程触れた「水ジルコニウム」という化学反応でした。
事故から12年。
簡単に現場解析ができない状況が長く続いており、原発事故の解明にはまだ時間がかかりそうです。
原発の安全対策を強化するには課題も多く、これもまた必然的に時間がかかることが予想されます。
一方で世界的に燃料供給不足状態におけるで発電コストの上昇により、世界中で原子力発電所の建設が進んでいることも実態で、日本も大きく方針転換し原子力発電所を稼働させていく方向に舵をきっています。
日本の方針転換は、エネルギー確保の問題もありますが、先日ここで紹介した「国商 最後のフィクサー 葛西敬之」に触れられていた日本会議の影響もありそうな気がして、その背景の実態はわかりません。
事故から12年もたって風化しそうな年月が流れているものの、こうやって検証を続けて公開していく姿勢があることは、NHKもよく頑張っているな、と個人的な印象です。
原子力発電の再開方針である政府側と、「ほんとにいいのか?」という問いかけをするメディア。権力を監視する、という役割を民放でなく、国営と揶揄されるNHKがやっているところが興味深いです。
民放でも政府方針に疑義を投げかける番組もなくはないのですが、ほとんどがコメンテーターの私的感情や見解に依存していて、人によってはその”適当さ”、”不必要な言い切り”にうんざりさせられることもあります。
私個人的にはただのエンターテインメント。
NHKのドキュメンタリーは、科学的、客観的な検証を有識者とすすめた上で問題をなげかけるスタンス。視聴者自身に考えさせます。
なので番組を視聴するたびに学ぶことがあります。
NHKはまだこの検証を続けるようなので、この続報が気になります。