また将棋ネタですみません^^;;
先日8つのタイトルの一つ、名人戦のタイトル戦第2局が行われました。
「名人」というタイトルは将棋の歴史上最も長く存在するタイトルです。1612年江戸時代から家元制として名人というタイトルがありました。
これは世襲制ではないものの、家元しか名人になれないという今とは異なる仕組みでした。
1937年から「実力制」名人としてタイトルの性質がかわり、棋士がタイトル目指して争う今のようなスタイルに変更され、それ以降毎年タイトル争いが行わることになりました。
名人以外のタイトルは予選に参加すれば、プロになってすぐでもタイトルに挑戦し、タイトルをとることが理論上可能です。
しかし名人戦は特殊なリーグ戦の構成をとっていて、プロになってすぐに名人になることは不可能なんです。
名人戦は、下部からC2級ーC1級ーB2級ーB1級ーA級とそれぞれの位のリーグ戦を1年戦い、そこでTOP2またはTOP3になることで翌年一つ上の位に昇格できます。
最後のA級リーグで優勝すると、そこでやっと名人に挑戦できるんです。
棋士は半年ごとに開催される三段リーグでTOP2になることで、四段に昇格しプロとなります。そして最初はC2級に所属します。
なので、プロになってから名人に挑戦できるのは最低でも5年かかることになります。
挑戦者になるだけでも大変(^^)なので、将棋界で「A級」に所属している、ということはトッププレーヤーである証でもあります。
さて、その名人のタイトルはご存知藤井八冠が保有しています。
現在挑戦しているのは藤井八冠と同じ愛知県出身の豊島九段。2019年には名人のタイトル、他にも竜王2回、叡王1回、王位1回、棋聖1回と合計6回のタイトルを経験した、かなりの強敵です。
藤井八冠がデビューしてまもないころ、豊島九段に全く勝てず0勝6敗、という時期がありましたが、現在は藤井八冠23勝、豊島九段11勝(名人戦第2局の前まで)で、しかも直近は藤井八冠が10連勝と、藤井八冠が圧勝しています。
この2人、2021年に3連続タイトル戦という将棋史上でもなかなかお目にかかれない、「19連戦」(すべて対局がフルセットになった場合)を戦っています。
6月に藤井王位(当時)に豊島竜王・叡王が挑戦。7月に豊島叡王に藤井王位が挑戦。10月に豊島竜王に藤井王位が挑戦。
そしていずれも藤井がタイトルを防衛および奪取して、3つともタイトルを獲得します。
豊島九段はそこでタイトルをすべて失い、翌年2022年に再び王位の挑戦者となりますが、返り討ちにあいます。
今回の名人戦は久しぶりのタイトル戦です(^^)
4月10日、11日行われた第1局は、終盤で豊島九段がかなり優位に立っていたのですが、一手緩手を指したことがきっかけとなって大逆転で藤井八冠が勝利。
そして先日第2局が行われました。
(画像:CBC NEWSのホームページより引用。右が藤井八冠、左が豊島九段)
名人戦は2日にわたって行われ、持ち時間は9時間もあります。
その2日目の夜、スマホのライブをチェックするとまだ対局している。
早速パソコンでYoutubeをひらき、ライブ配信している中継をみることにしました。そのときはまだ形成互角。
少し藤井八冠に形成が傾きかけたのですが、豊島九段が盛り返してかなり優勢に。
AIの表示では、もう詰みまで見えていたくらい追い詰めたところで、まさかの緩手がでて、一気に逆転。10分後には投了していました。
あ〜、2局続けての逆転負け・・・
なんでまた、と思ったのですがYoutubeでやっていた解説をみて、藤井八冠の恐ろしさを改めて感じることになりました。
我々観戦者は今はAIによる形勢判断と次の最善手をみることができますが、実際に対局している棋士は盤上でしか感じることができないため、AIの表示とは感触が異なることはよくあること。
たいてい対局者もAIも形勢が一方に傾いていると判断できる状況って、優位なほうが緩手をさしたところで形勢がかわるまでにはいかないケースが多いです。
それだけ差がついているんですね。
ところが、この名人戦の第1局も第2局も、AIが示す最善手をさせば豊島九段の優位を維持できるのですが、それ以外の指し手では形勢が変わってしまうため、一手も緩むことができないんですね。
持ち時間がなくなり1分将棋(持ち時間が残り1分になること)になったりすると、これはかなりのプレッシャー。
そういえば昨年永瀬王座(当時)が藤井七冠(当時)と対局して、最後の最後で詰めを誤り大逆転負けをしたことがありました。指した後に普段冷静な永瀬王座が頭の毛をかきむしって感情を抑えられなかったシーンがありましたが、まさに同じようなことが、この名人戦でも起こっていたようです。
力のかぎりを尽くして追い詰めたんだけど、最後に力尽きてしまった、そんな状況がイメージされました。
それくらい藤井八冠の壁は高いということなのかもしれません。
Youtubeの解説では、豊島九段がいかに死闘を尽くしたかということをわかりやすく解説してくれていました。
今やビッグモンスターとなった藤井八冠。これだけ強いと、「誰が最初にタイトルを奪取するか」に興味の対象が移ってしまいますが、すばらしい対局を見せてくれているので、観戦者としては、次の対局も楽しみです。
余談ですが、棋聖というタイトルに山崎隆之八段が挑戦することになりました。
山崎八段は定石にとらわれない独創的な指し方をすることで有名。その自由っぷりが将棋界で異彩を放っており、私が好きな棋士の1人です。
こちらも楽しみ(^^)