48歳からの挑戦

47歳で脱サラ、48歳で起業したおじさんの奮闘ぶりをご紹介しています

読書会〜自衛隊の闇組織

 

今回の読書会の課題図書はこちら。自衛隊の中に、首相や防衛大臣も知らないという特別組織「別班」が存在しているかもしれない、という情報をつかんだ筆者が、長い時間をかけて追いかけて掴んだ情報をまとめたもの。

 

ちなみに、日本政府はこの組織について2013年12月の答弁書で「『陸上幕僚監部運用支援・情報部別班』なる組織については(中略)、これまで自衛隊に存在したことはなく、現在も存在していない」と否定しています。

朝日新聞GLOBE+のページより引用)

 

人気テレビドラマ「VIVANT」で堺雅人さん演じる主人公が「別班」員だったらしく(私はこのドラマをみていない)、この「別班」という言葉はかなり認知度が上がったようです。

 

著者がこの「別班」の取材に取り組んでいる理由、それは上述したように「軍人」の集まりである自衛隊のトップにいるはずの防衛大臣、首相という「文人」によるコントロール、すなわちシビリアンコントロールが効いていないのではないか、という疑念を感じたからです。

 

シビリアンコントロールは、第二次世界大戦以前に陸軍(関東郡)が政府の意向を無視して暴走し、戦争を引き起こしたことを反省してできたルールです。

 

それが効いていない、というのは再び「軍人」が暴走する恐れがあり、憲法違反ではないか、というわけです。

 

ちなみに「別班」と呼ばれている人物たちは、国内のみならず海外にもいて諜報活動などを行っていると言われているそうです。

 

 

 

 

さて、本書を読んでの感想です。

 

著者はシビリアンコントロールが侵されているおそれがある、ということで、なかなか情報を取ること自体が難しい自衛隊組織に、様々な工夫をして取材を試みます。

 

この取材力や行動力はさすがですね。

 

ただ取材する方向性がこれでいいのかなぁ、という気持ちは感じました。

 

別班が衆議院で質問をされたのは2013年。当時は安倍政権。

 

その時点での状況で考えれば、憲法改正自衛隊を明記し、集団自衛権の拡大を目指していた安倍政権としては、別班の存在はむしろ歓迎すべき存在と見ることも可能。

 

それ以前に目を向けて、戦後直後からみると、「戦争放棄」をうたって「戦争をしかけません」と宣言したところで、米ソ冷戦が始まり、後に中国経済の成長による米中関係が微妙になり、北朝鮮からは工作員が侵入してくるような状況で、国を預かる政府は、平和ボケしてのほほんとしている場合ではなく、常に隣国、世界がどう動いているのかを知るために緊張を仕入れられていたのではないか、と仮説を持つことはそんなに無理を感じない気がします。

 

「別班」の存在自体を調査することが困難であることから、存在していたとしたら、というその先の考察まで意識をもっていくことはさらに困難かもしれません。

 

ただ、国防に関することをただの暴露記事にするだけでは、中国や北朝鮮といった国々がいいがかりをつける材料になってしまうだけ、という懸念を感じます。

 

もしこの著者が懸念しているように、陸軍が暴走していたとしたら、それが陸軍トップの幕僚長の判断で行われているとは、ちょっと考えにくい気がします。なぜなら、その動機が考えにくいから。

 

いずれ軍のクーデターを狙うくらいの野心があるとしたら、長期間トップの座に君臨し続けるだろうし、ちょくちょく交代される今の幕僚長にその動機を求めるのはなかなか難しい印象。

 

あるとすれば、その幕僚長を裏で操る人物あるいは組織が存在している場合。ただそうなった場合はCIAが勝手な動きはさせないだろうし、政府を無視してまで進めるメリット自体がないように感じます。巻き込んだ方が絶対やりやすいだろうから。

 

一方で、政府が実は知っていたとしてもそれを公にすることは、対外関係、特に中国に対して喧嘩売っているのと同じで、メリットを感じません。知っていても公にできない背景があるかもしれない、と考えることも可能です。

 

 

 

 

そういったいろいろな考察が考えられる問題に対し言及がないことから、私個人としては表面的なことにとらわれているような印象を感じました。

 

外交、国防、複雑な問題は簡単に語ることはできませんが、こういったことがある、ということを本を通じて認知させることは意味があると感じます。