今回の課題図書は「儲かる物理」。普段馴染みが薄い「物理」という世界と 日常的な「儲ける」という世界を結びつけたユニークな書。
どんな本?
まず著者の略歴自体がユニークです。
鈴木 誠司さん。
現在の本業は不動産、起業のコンサルタントですが、もともとは高校教師、大手予備校で講師をされていた方です。
物理を教えていらっしゃったのでこの企画になったようですね。
他にも学生向けの物理の参考書をいくつか執筆されているので物理の見識はしっかりお持ちでいらっしゃいます(^^)
「儲かる・・・」とあるので本書では「物理」の話と「お金を稼ぐ」ことを対比して10章にわけて紹介。
ニュートンの運動の三法則、エネルギー保存の法則といった高校で学ぶ物理から、フェルマーの原理、ブラウン運動、エントロピー、核反応といった大学で学ぶ物理まで扱っています。
物理は自然科学を表現する学問ですが、表現方法として数式が「言葉」として使われます。
そのため数式を導き出すためにどうしても数学の見識が必要なんですね。
ここが物理に拒否反応する人が多い理由の一つでしょう。
本書でもいたるところで数式がでてきます(^^)
なので一部で「ここからはワープしていいですよ」みたいな表示もあり、数式を飛ばして読むことも可能です。
気になったところ
この本では物理の考え方が儲けるということを考える時に応用がきくだろう、ということで、物理の話とお金を稼ぐための行動とを例え合う構成になっています。
速度と生産性(利益)
エネルギー保存と複式簿記
確率とカジノ
エントロピーと会話力
自由度とリスク・リターン
核反応と不動産投資
リスクについて
物理は、仮説→検証→実験→評価を繰り返します。
この筆者は検証、実験をなんと自ら実践してきています。
予備校やめて法人化したり、ラスベガスでカジノやったり、札幌で不動産投資したり・・・
そして見事にたくさんの失敗をしてきています。
大成功物語でないところが本書の憎めないところかもしれません(^^)
私は「フェルマーの原理と機会費用」「確率とカジノ」「ブラウン運動とオプション取引」あたりに興味がひかれました。
「フェルマーの原理と機会費用」では「機会費用」という概念が面白いですね。
言ってみればその人の単価次第でとるべき手段は変わってくるというものです。
もっと平坦にいうと、時間が余っていて収入の低い人は時間をかけて費用を節約、時間がなくて高収入の人は費用をかけて時間を節約することがお得、という考え方です。
これを物理で言うところのフェルマーの原理と合わせているのが面白い見方です。
「確率とカジノ」「ブラウン運動とオプション取引」では、「お、確実な金儲け理論でも紹介するのかな」なんて冷やかし気味に読んでいたのですが、最後は実践と理論は違う、というオチ(笑)
要は理論はある前提条件があって成立しているので、前提が崩れれば理論も役に立たないわけです。
読書会での意見
まず参加者がぐっと減りました(笑)
そして本書に対する評価はあまり高くなかったようです。
これは物理の本では避けられない数式の存在のようですね。
物理ときいただけで脳が停止しちゃうくらい抵抗感がある人が思った以上に多いんだなぁと感じます。
普段の生活において物理はなくてはならない理論なんですが、ブラックボックスから脱却するのはかなり困難なようです。
とはいえ、金儲けという多くの人が関心高いことと物理をつなげようとした試みはとてもおもしろいし、意義のあることだと思います。
読書会に来れなかった物理を専攻していた友人の意見がききたかったなぁ(^^)
「ちょっと言いたいことがある」と言っていたので(^^)
「本書は誰を意識して書いたのか」という問いかけがありました。
出席者の多くの人は「よくわかならい」といっていましたが、私は「お金に関心のある人でちょっと物理に興味をもってもらいたい」みたいな視線ではないかなぁ、と。
物理そのもの、というより物理的思考にちょっとでも触れてもらえれば本書は役に立っているのかなという気がします(^^)