今回の課題図書はこちら「フェルマーの最終定理」。
17世紀にフランスの役人の仕事をしていたピエール・ド・フェルマーは数学については職業にしていたわけではなく、言ってみれば”アマチュア”の側にいた人間でした。
しかし彼が当時の数論の本「算術」の余白に記した
「3 以上の自然数 n について、xn + yn = znとなる自然数の組 (x, y, z) は存在しない」
という主張、これがいわゆる「フェルマーの最終定理」と今日呼ばれる命題です。
フェルマーはさらにこの余白に
「私はこの命題の真に驚くべき証明をもっているが、余白が狭すぎるのでここに記することはできない」
という謎めいたメモも書き添えていました。
このもったいぶったしかけに、なんとこの後300年以上も世界の数学者が振り回されるというのです。
そして1993年にアンドリュー・ワイルズという天才数学者がついに、この命題を証明したと発表するも欠陥が見つかり、再び暗黒にもどりそうだったところ、新しい展開をみせて1994年に証明が実現しました。
実はこのフェルマーの定理は、元はと言えば2000年前にその原型はさかのぼり、フェルマーの最終定理が証明される経緯は、この時代に遡ることでいわゆる数学、数論の歴史そのものをひもとくにつながることを、著者サイモン・シンが語ってくれます。
私はおよそ2年前に一度友人のすすめもあって読んでいます。
すっかりどんな内容だったかあらすじも忘れてしまったくらいでしたが、二度目となると結構早く読めるものですね(^^)
数学って世の中で生きていく上では必要ないね、なんていう人は少なくないでしょう(^^)
確かに三角関数や偏微分方程式を知らなくたって、生きていくことはできるし、仕事をすることもできます。
しかし数学は間接的に我々の生活の中に根深く浸透しています。
私は学生時代物理を専攻していて、物理現象を表現するときに数学は必然でした。
言ってみれば物理学にとって数学は”言葉”みたいなものなんです。
数学という言葉で表現されることで物理現象が理解され、発展し、その様々な要素を応用して我々の普段の生活に溶け込んでいます。
みなさんが使っているスマホやカメラ、洋服や食器、ありとあらゆるものが物理現象として数式で表現することが可能です。
数字や数式は人間が作り出したものですが、その中には不思議な世界が潜んでいるようです。
そしてそれは美意識ともつながり、独特の好奇心を誘い出す不思議な存在になります。
そういった不思議な存在に見せられてのめり込んでいったのが、この本に登場する多くの天才たちであり、この本に乗り切らないほどの研究者たちなのです。
この本に登場する人物たちは天才ばかりで、選ばられし人たちなのではないかと感じます。
努力だけでは到底追いつかない人たち。
継続と努力である程度のところまではいけるでしょう。
私でも学生時代からずっと数学の研究をしていけば、大学で教えられるレベルまではいくかもしれません。
でもこういった天才たちの影さえも踏めない自信があります(笑)
話が脱線しました(^^)
よく研究は人に手柄をとられたくないため、秘密裏に行うことが多いです。
特許に絡む話などはいい例ですね。
数学の世界では自分たちのアイデアをお茶しながら披露し合い、意見の補完をしていくのだそうです。
フェルマーの定理を証明したワイルズ氏もいろいろな数学者の力を借りて理論を固めていきます。
好奇心の探求という力がどれだけ大きいのか、ちょっと覗けたような気がします。
そして大きな壁にぶち当たるたびにその壁を壊して前へ進んできた数学界と、志半ばで遠ざかるを得なくなった多くの天才たち。
ドラマ性たっぷりなので、2回めとなった今回はかなりのスピードで読むことができました。
それにしても、著者のサイモン・シンと訳者の青木薫氏の表現力はすごいな、と思います。
これだけ難解な話題にも関わらずかなりわかりやすい構成と表現でした。
関連映画「奇跡がくれた数式」「イミテーション・ゲーム」をまた観たくなりました(^^)