最近ビジネススクールの学友たちがFacebookで本著を読んだという投稿を目にしています。
話題の新書ということで読書会でも取り上げてくれました。
英語版は2018年4月に刊行されたようですが、日本語訳は今年の1月刊行。
英語の副タイトルは「Ten Reasons We're Wrong About The World - And Why Things Are Better Than You Think」
すなわち「世界を間違って認識している10個の理由ーなぜ世界はあなたが思っている以上に良いのか」です。
日本語訳の副タイトルは「10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣」となっていて表紙には「賢い人ほど世界を知らない」と書かれています(^^)
なかなか興味深いカバーです。
著者の1人ハンス ロスリング氏はバブルチャートを見せながらデータで世界を見せてくれるTEDのスピーチでも有名な公衆衛生学者で、残念ながら本著の完成を前に膵臓がんで亡くなっています。
最後に仕上げたのはハンス氏の息子夫婦。
ハンスが生涯に渡って積み重ねてきた研究・体験の集大成として本著が奏上されたそうです。
この本では世界で起きていることを正しく理解しているかどうかを問う13の質問があり、三択で答えるようになっています。
著者いわく「何も知らないチンパンジーに答えを選ばせても確率的に1/3が正解する」というフリがあるのですが(笑)解いてみるとなんと、恐ろしく低い正解率でした。
著者は「チンパンジー以下」とバッサリやっているのですが、実はこれ、私だけではないらしい。
世界の知識の頂点と言われるノーベル賞を受賞した人たちの集まり、世界をよく知っているはずの大手メディアの関係者、大学関係者など錚々たる人たちに解かせても、結果は「チンパンジー以下」だったそうです。(笑)
なぜ?
それがこの本に「本能」という表現で「10個の理由」として書かれています。
これが実に的を得ている我々の思考の落とし穴で、「あ〜、あるある(^^)」というくらい私はたくさんの落とし穴があることを自覚させられました。
ハンス氏がTEDで講演している様子がこちらYoutubeにあります。
いかに先入観、過去の見識にとらわれて現実を見ているか。
いかに刺激を求めて解釈にバイアスをかけているか。
以前このブログでも、報道内容に発信側の意図が織り込まれていて事実の間引きがされている印象をもっていることを述べたことがあります。
最近の言葉で言えば「印象操作」といってもいいくらいです。
いかにも犯人としてのイメージを与える
いかにも敵対国としてのイメージを与える
いかにも間違っている、あるいは正しいというイメージを与える
そしてそれらをなんの疑いもなく受け入れている我々。
そして事実と異なる状況を事実として脳に格納してしまう。
そして知った気になってその間違った知識をひけらかす。
なんとも赤面甚だしいことこの上ありません(^^)
本文の一例をあげましょう。
アメリカで過去20年(執筆時を考慮すると1996年〜2016年あたりと想定)で
・テロで亡くなった人:3,172人
・飲酒が原因で亡くなった人:1,400,000人
飲酒が原因といっても、飲酒をして亡くなった人を除いて飲酒による殺人や飲酒運転による殺害で亡くなった人:150,000人
つまりテロで殺される確率より酔っぱらいによって殺される確率が50倍高い、という数値がでています。
私も正直その感覚はありませんでした。
テロによる事件はセンセーショナルに報道されますが、酔っぱらいのほうがより危険な存在と言えなくもありません。
なんせ、夜になればそこらじゅう酔っぱらいだらけですから・・・
掲載したTEDのYoutubeでもご覧いただけますが、以下に先入観にとらわれて我々は事象を見ているのだろう、と痛烈に感じさせられます。
一度得た知識をあたかも「既得権」のように大事に大事にとっておいて、世の中に変化によって必要とされる「脳内アップデート」を怠ってきたからなんですね。
ネット社会になって情報量の流量は膨大になり、益々事実の情報が誇張された情報やフェイクの情報に埋もれつつあります。
だから「これはホントか?」というクリティカルシンキングのような「批判的な」視点で見る姿勢も必要な能力の一つだと思うのです。
FACTFULNESS(ファクトフルネス) 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣
余談ですが・・・
読書会で集まったメンバーは全員3問以下という例に漏れず「チンパンジー以下」でした(^^)
ちなみに先日私の相談役のTくんに13の質問をやってもらったら、見事に半分以上正解していました。
普段から客観的な視点がウリのTくん、世情や情報にながされにくい面を垣間見ました。