今回の読書会の課題図書はこちら。
老年精神科に携わった医師和田秀樹氏による2012年出版の本です。
老人になると自分も含めまず心配になるのが「認知症」、いわゆる「ボケ」ですが、実際は「老人性うつ」という症状があり、認知症とは違いますよ、と教えてくれる内容です。
医療研究機関によると、高齢者の約5パーセントがうつ病を発症している可能性があり、約3,000万人いる(2012年あたり)高齢者のうち120万人以上のうつ病患者がいることが予想される、という驚きのデータからこの本は始まります。
そして驚くのは自殺者の4割が高齢者であること。
自殺する人は比較的若い人が多いのではという先入観を持っていましたが、4割といえばほぼほぼ人口比率と同じくらい、すなわち若い人特有ではなく、むしろ同じくらいの割合ということなんですね。
そして老人性うつは「生物学的」な現象でもあるといいます。
セトロニンという物質が高齢化とともに減ってくることによって、発症しやすくなるらしいです。
こういった「老人性うつ」という現象をわかりやすく説明し、対応について提言をいくつか紹介してくれているのが本書になります。
この本を読んで、昨年父が手術が入院したときのことを思い出しました。
入院していた父を見舞う(実際はコロナ化で見舞いはできないのですが、「荷物を受け渡す」という名目で病棟のガラス扉の前まで行くことができ、そこで携帯で話をする、という形でした)のですが、妹がやたらと父がボケてきたのではないか、と心配していました。
反応が鈍くなり、元気もなく、何も知らない我々にとって見れば「ボケ始めたのかな」と感じてもおかしくない状態でもありました。
ただ私は父と話をしていたときにしっかり考えることはできるし、好きな話題であれば自分からも話ができていたので、ボケかなぁ、としっくりきていませんでした。
この本を読んで、もしかしたら一時的に老人性うつにかかっていたのかも、と感じました。
今はすっかり元気になり、足腰を鍛えなきゃと意識的に歩くことも始めたようで、あきらかに入院時よりしっかりしている印象です。
この本に書いてあったのですが、認知症であればそれは進行性なので短時間で治ることはないそうです。
なので様子が変わったということは少なくとも認知症の症状ではなかった可能性が高そうというのが私の見解。
そして高齢化でセロトニンの分泌が下がっているので、何かの拍子でいつでも発症する恐れがある、ということも認識しておき、いざというときには認知症ではなく老人性うつとしての処置を相談することを、私自身意識しておく必要があるな、と思いました。
これは父ばかりでなく、今は父のケアで気丈な母にも起こりうる話です。
そしていずれは自分も発症するリスクがあります。
私はこの本を読むまで、老人性うつについての見識がなかったので、両親のこともありいいタイミングで知見を得るきっかけを持てました。
わかりやすい文章なので、とても読みやすいと思います。