今回の課題図書はこちら
南アフリカ出身のコメディアン、トレバー・ノアの自叙伝。
私はトレバー・ノアという人物は正直知らなかったし、アパルトヘイトにおける人種差別は「白人vs黒人」という構図という先入観程度しかもっていませんでした。
先日このブログでも紹介した「インビクタス」という映画は、まさに白人vs黒人の構図で描かれていました。
この本はアパルトヘイトはそんな一面だけではなかったことを教えてくれます。
本をめくって最初のページに母親へ感謝のメッセージが2行ほどで書かれています。
本を読む前は謝辞と同じような位置づけで、自分の母親への感謝の気持ちを書いたのかなぁ、程度の受け止め方でしたが、本を読み終えると最初のページにかかれていたことに合点がいく気がしました。
これはトレバー・ノアのお母さんあってのトレバー・ノアであることを語っているからです。
「人として生きる」ということは社会との関わりは不可欠であり、その社会が決めた”ルール”に従うことが前提となっています。
しかしその”ルール”が「人として生きる」ためのものでなかったとき、果敢に対抗する行動力および継続する精神力を維持できるでしょうか。
植民地政策しかり、奴隷制度しかり、ナチスドイツしかり、日本のアジア侵攻しかり・・・
これらは一時の為政者だけによるものではなく、為政者を支持した多くの人達がいたから起こったことでもあります。
アパルトヘイトを支持していた白人層と大きな差はないような気がします。
トレバー・ノアのお母さんは果敢に抵抗し、それが人として当然であることを子供に示し続けてきたことに、正直凄みさえ感じます。
制度に埋もれることから救ってくれた人、それがお母さんだったんですね。
感謝の言葉をめくると次は「背徳法」が書かれています。
欧州人と現地人との間における性行為および関連する行為を禁止するというものです。
欧州人は白人、現地人とはすなわち黒人です。
すなわち、白人と黒人との間に生まれた子供(混血児:カラード)は犯罪の結果生まれてきた子供ということです。
白人からみたらカラードは黒人、黒人からみたらカラードは白人、どちらからも忌み嫌われる存在だったわけです。
トレバー・ノアは混血児。
すなわち「違法」に生まれた子供だったんですね。
この「背徳法」に改めて目がいきます。
だから冒頭の掲載だったのかも・・・
人は社会とともに生きる営みを行います。
社会がなければ、工業も農業もなく類人猿の時代さながら、毎日肉食動物に捕食されないように生き続けなければなりません。
社会は”人類”を守る術の一つである一方、この社会が”特定の人類”を守る手段として悪用されている事例の一つがアパルトヘイトのような「差別政策」だったりします。
自分たちが生きるために縄張りを主張したり、戦ったり、序列をつくったり(猿やハイエナなど)、メスと交配するためにそのメスの子供を殺したり(クマなど)、といった同種を傷つける、支配する行動は他の動物にも見られます。
自分を守るために、という点では人種差別政策も同じ性質のものかもしれません。
しかし制度は本来”人の生活”を守るためのもの。
人種差別政策にはどうしても抵抗を感じざるを得ません。
それにしても、トレバー・ノアの人生、たくましい(^^)
小さい頃から人生の選択を何度も迫られるような生き方。
私は幸か不幸かそんな選択を必要とせずにおとなになってしまった。。。
自分の甘さはそういうところにも起因しているのかなぁ、と少々落ち込む気分です(^^)
この本は英治出版による出版なのでビジネス系にジャンルされると思いますが、子供や学生が読んでもいい本だと思います。
むしろ親子で一緒に読むことで親にも学びや気付きがあるかもしれません。
「たくましさ」・・・この本で描かれていることはこれかもしれません。