48歳からの挑戦

47歳で脱サラ、48歳で起業したおじさんの奮闘ぶりをご紹介しています

読書会〜「沖縄スパイ戦史」

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映画監督三上智恵氏が同名の映画を作成し、映画上映後も追跡調査した内容を反映した大作です。

 

なんと749ページにも渡るボリュームで、その分厚さときたらすごい。

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そして内容がかなり重い、ときているので読みすすめるのに難儀しそう、と覚悟していました。

 

第1章は取材してインタビューをしてきた人たちの話が対談形式でまとめられていて、これだけで330ページにもなります。

 

これはこれで生の声としてとても大切なものなのですが、この本の言わんとしているところ、すなわち著者の理解、見識といったところは第2章以降にまとめられているので、私は第2章以降を読むことにしました。

 

正直、読んでいてかなり気持ちが重くなり、読むことがしんどくなりました。

 

同時にこれが戦争という行為の恐ろしさなんだということを痛感させられます。

 

題名は「沖縄スパイ戦史」というように、戦時中の沖縄で「スパイ」と見られた住人が虐殺されたという言い伝えを著者が丁寧に取材を通じて検証し、その内容をまとめたものです。

 

そして著者は沖縄という舞台を通じて「戦争のもつ恐ろしい一面」を見事にあぶり出していると感じました。

 

戦争は、軍と住人が一体となることが当然とされ、軍人と住人の区別がつかなくなり、相手は軍人のみならず一般住人までも殺害せざるをえなくなってくる。

 

そして住人を巻き込んだ軍は、その機密を保持することを目的に挙動の怪しいものは、「スパイ」として処刑をし、「スパイ」あぶり出しを住人たちにやらせるのです。

 

住人たちは自分たちの生命がかかっているので、少しでも怪しいと思われる人を密告するようになります。

 

それは「住人が住人を殺す」ことと同じこと。

 

戦争において敵の攻撃によって亡くなるという、直接的な戦死より、こういった内部の粛清による死亡者が実はとても多い、という事実に驚かされます。

 

「軍の作戦の成功は住人の安全より優先される。親兄弟の生命よりも優先される」という当時の日本軍の方針は、陸軍中野学校を通じて士官たちに教え込まれます。

 

「基地があれば戦争の舞台になる」

 

「軍は自分たちを守ってくれるとは限らない」

 

そんな地獄絵を経験してきた当事者がまだかろうじてご存命でいらっしゃるタイミングに、これだけの証言記録をとったことはとても価値の高い仕事だったと感じました。

 

 

 

 

日本は幸いにも第二次世界大戦以降、直接的な戦争を行わずに済んできました。

 

(もちろんPKO派遣や、国籍不明船による攻撃や、北朝鮮拉致問題など、当事者たちが”戦争”といいたくなる事件はいろいろあります)

 

だからこそ、戦争の恐ろしさが意識に残りにくくなってきているのも事実。

 

今は人を殺せば「殺人罪」として罰せられるのは世界共通の認識です。

 

しかし戦争では「正しい」と信じて人を殺しているという実態があります。

 

この本に登場する人たちが「正しい」と信じて行動した結果が、住人虐殺だったことを三上氏は生々しく我々に語りかけています。

 

今のこの時代には狂気に思えることも、戦時下にあれば当たり前になってしまう恐ろしさ。

 

この本でも言われていますが、日本がどんどん戦争をしやすくなるように法律が改正されているようです。

 

自衛隊法103条では「物質の収容や業務従事命令について定めて」います。

http://j-peace.org/siryou_html_data/yuuji_kanren/siryou_06.html

 

これによると、自衛隊法第76条に定める有事の際には

都道府県知事は、長官又は政令で定める者の要請に基き、病院、診療所その他政令で定める施設(以下本条中「施設」という。)を管理し、土地、家屋若しくは物資(以下本条中「土地等」という。)を使用し、物資の生産、集荷、販売、配給、保管若しくは輸送を業とする者に対してその取り扱う物資の保管を命じ、又はこれらの物資を収用することができる。

とあります。

 

すなわち、軍隊の要請に基づき力を貸さないといけない、ということになっているんです。

 

自衛隊法第76条では「外部からの武力攻撃(外部からの武力攻撃のおそれのある場合を含む。)に際して、わが国を防衛するため必要があると認める場合」に内閣総理大臣自衛隊に出動命令を出せる、と規定しています。

 

法律の解釈はいつでも都合のいいようにされるし、下手をすると強硬して法律が改正されるかもしれません。

 

そんなことをいったらキリがないでしょうけどね。

 

 

 

ただあくまでも根拠のない個人的な感覚なのですが、これからの戦争のスタイルは大きく変わっていくだろうと感じています。

 

「戦争に勝つ」をどう定義するか。

 

それは「相手国の戦意喪失させること」です。

 

つまり戦う気をうせさせることなんですね。

 

そのための手段は人殺しではなく、経済的、精神的な面に移行していくんじゃないかと。

 

 

 

そうはいっても中東やアフリカ、アジアなどでは未だに戦闘が起こっており、多くの人達が犠牲になっています。

 

それが対岸の火事ではないと認識する上でこの本は意義のある本だと思います。

 

痛い目に合わないと理解できないのが人間の性。

 

でも痛い目に合う前に理解できるポテンシャルもあるはず。

 

「戦争?なんだかわかんねぇや」というノーテンキな人には読んで感じてほしい本です。

 

追伸:映画は2018年に公開されたようです。Amazon Primeでもレンタルで観れそうなので、今度映画をみてみようと思います。