今回の課題図書は、こちら「証言 羽生世代」です。
将棋好きな私としては嬉しい選書(^^)
最近は減ってますがこのブログでも何度か将棋の話題を投稿させていただいています。
私が将棋をよく指していたのは小学生時代で、当時はアマ初段くらいはあったと思われます。
将棋界は江戸時代に今の家元制度のような形で江戸幕府の保護うけて発展、昭和に入って実力制になってから、スターの名前とともに時代が区切られると私はみています。
1950年〜1981年くらいまでは大山康晴永世15世名人(故人)の時代
1968年〜1992年くらいまでは中原誠永世16世名人(引退済)の時代
1983年〜1999年くらいまでは谷川浩司永世17世名人の時代
1989年〜2017年くらいまでは羽生善治永世19世名人の時代
年代が重なるのはそれぞれのスターが強い状態で共存していたということです。
今は藤井聡太二冠が羽生善治に続くスターと言えるでしょうが、2004年位から現在に至るまでは渡辺明三冠が羽生善治に次ぐツワモノとして将棋界を牽引しています。
永世名人は、名人というタイトルを5期務めることで得られる称号です。
お気づきのように上記リストでは15世から順に時代を支えていることがわかりますが、18世がいません。
永世18世名人は、森内俊之という人で羽生善治と同じ歳の現役棋士です。
そう、なんと永世名人が同じ時代に2人も登場したのです。
永世名人のように、一つのタイトルを連続または通算である規定の回数獲得すると永世の称号がつくのですが、将棋界では以下の人たちしか持っていません。
- 永世竜王(前身は永世十段):渡辺、羽生、(大山、中原)
- 永世名人(実力制以降):木村義雄、大山、中原、谷川、森内、羽生
- 永世王位:大山、中原、羽生
- 名誉王座:中原、羽生
- 永世棋王:羽生、渡辺
- 永世王将:大山、羽生
- 永世棋聖:大山、中原、米長邦雄、羽生、佐藤康光
- 名誉NHK杯選手権者:羽生
全部で9人しかいない永世(名誉)タイトル保持者ですが、羽生、森内、佐藤康光(羽生の1つ年上)といわゆる「羽生世代」で3人もいるんです。
大山時代は、大山康晴のみ
谷川時代は、谷川浩司のみ
羽生の後を支えている現代では渡辺明1人です。
羽生世代が初めてタイトル戦に登場した1989年から最後に登場した2020年(いずれも羽生善治)までの間で
タイトル戦:225回
羽生世代が登場した回数:174回
そのうちタイトルを獲得した回数:135回
と本書で紹介されています。
このようにほぼ30年にわたって将棋界を牽引してきたといっていい羽生世代。
本書は「羽生世代」を羽生善治本人含めて6人(羽生、森内、佐藤康光、郷田真隆、藤井猛、丸山忠久)として、本人たちと羽生世代に絡んだ人たちへのインタビューをまとめたものです。
共通の問いかけは「なぜ羽生世代は強かったのか」。
将棋を知っている人からすれば、なかなか味わい深い内容だし、知らない人にとっても将棋のトップ棋士の感覚にふれることができる興味深い内容だと思います。
将棋は勝たないと意味がない
これはどの棋士にも共通したものなのですが、一方で、
将棋は己との戦い
将棋は宇宙空間
という感覚が見えてきます。
スポーツの世界でもトップアスリートの感覚は、その種目をしらなくても何か伝わってくるものがありますが、それと似たような感覚を味わえるのではないかと。
アマチュアとプロとの差が大きいゲームとして、私の中では「相撲」と「将棋」がトップです。
どんなにアマチュアの強豪といわれていても、プロの卵にさえかなわないくらいの歴然とした差があります。
だから将棋の世界に身を投じた人たちは、プロを目指してからものすごい伸びがあってこそのプロなんですね。
最近将棋ではAIが活用されるようになり、将棋の質も変わってきた、とこの本でも触れられています。
私も個人的には羽生世代の人たちの将棋のほうが、今のAI将棋よりも好みですね。
ただAIの将棋の申し子と言われている藤井聡太は、そのAIをも凌駕するような可能性をもったスターの卵でもあります。
彼の計算はAIよりも早い(笑)
彼の指し手はAIでは最初評価が低いのですが、AIが計算を重ねていくうちに評価があがり、最終的には最善手と評価されることがしばしばあるそうです。
彼は全くの別格です(^^)